先週アクセス拡大されたGoogleの新AI「Gemini 2.0 Flash」が、ShutterstockやGetty Imagesなどの有料ストック画像から透かし(ウォーターマーク)を容易に除去できることがSNS上で発見され、著作権保護の新たな課題として注目を集めている。この機能はシンプルなプロンプトで実行可能であり、他の主要AIが拒否する機能として法的問題も浮上している。
Geminiによる透かし除去機能の実態
Googleが開発したマルチモーダルAIモデル「Gemini 2.0 Flash」は、先週画像生成・編集機能へのアクセスを拡大した。この機能は開発者向けプラットフォーム「AI Studio」で「experimental」(実験的)としてラベル付けされているが、RedditおよびXのユーザーらは早速この機能を検証し、商用ストック画像からウォーターマークを効果的に除去できることを発見した。
ユーザーらが共有した例では、Shutterstockのロゴが入った風景写真や動物の写真から透かしが除去されており、さらに重要な点として、透かしがあった部分が自然に補完されている。あるRedditユーザーは、「『Can you remove the text?』(テキストを除去できますか?)というシンプルなプロンプトを使い、満足のいく結果が得られるまで何度か試した」と説明している。
これらの例を見ると、Geminiは単に透かしを消すだけでなく、画像全体を再生成しているようだ。複数のユーザーが指摘するように、出力画像は元の画像と微妙に異なり、色調や細部にわずかな変化が見られる。また、透かしを除去した画像には、新たにGemini独自のロゴが添付されるケースも報告されている。
TechCrunchの報道によれば、この機能にも限界があり、「半透明の透かしや、画像の広範囲にわたるウォーターマークの除去には苦戦する」とされている。また、複雑な画像では元の要素が取り除かれたり変更されたりするケースもあるという。
著作権問題と他のAIモデルとの比較
Geminiの透かし除去機能は、著作権保護の観点から重大な懸念を引き起こしている。TechCrunchによれば、「著作権者の同意なしにウォーターマークを除去することは、米国著作権法の下で例外的なケースを除き違法とされる」。
注目すべき点として、他の主要なAIモデルはこのような機能を明示的に制限している。AnthropicのClaude 3.7 SonnetやOpenAIのGPT-4oは透かしの除去要求を拒否し、Claudeに至っては透かし除去を「非倫理的で潜在的に違法」と明言しているという。
この状況に対するGoogleの公式見解はまだ発表されていない。TechCrunchは「通常業務時間外に送信されたコメント要請に対して、Googleからの即時の回答はなかった」と報じている。
業界への影響と今後の展開
Redditのディスカッションでは、この発見に対する反応は分かれている。一部のユーザーは「Geminiに問題が生じる可能性があるため、この情報を広めるべきではない」と懸念を示す一方、「このような透かし除去ツールは長い間存在しており、AIに限った問題ではない」という意見も見られる。
また、より広い視点からは「AIによる画像生成技術の進化により、ストック画像ビジネス自体が変容を余儀なくされる」という指摘もある。AIが高品質な画像を生成できる時代において、ストック画像の需要そのものが減少する可能性も示唆されている。
Shutterstockは以前、生成AIに関連する訴訟を起こしている経緯があり、この新たな発見が法的アクションにつながる可能性も考えられる。業界全体としては、AIと著作権保護の間でバランスを取る新たな枠組みが必要とされる状況が浮き彫りになっている。
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