NVIDIA RTX 5090の発売から1.5ヶ月が経過しても深刻な供給不足が続き、転売価格の高騰が一般消費者だけでなくシステムインテグレーターにも影響を及ぼしている。米国のPC構築業者PowerGPUは、卸売業者から定価1,999ドルの約1.5倍となる3,000ドル以上の価格で仕入れを余儀なくされていると明かした。
RTX 5090の供給不足と価格高騰の現状
NVIDIA RTX 50シリーズの中でも最高性能を誇るRTX 5090は、Blackwellアーキテクチャを採用した同社のフラッグシップGPUだが、発売から約1.5ヶ月経過した現在でも妥当な価格での入手が事実上不可能な状況が続いている。NVIDIAは「発売から5週間以内にAda Lovelace(RTX 40シリーズ)GPUの2倍のBlackwell(RTX 50シリーズ)GPUを出荷した」と主張しているが、この数字は市場の実態とは乖離している。
特に深刻なのは、一般消費者のみならず契約関係を持つはずのシステムインテグレーター(PCの組み立て業者)までもが適正価格での入手に苦戦している点である。米国のシステムインテグレーターであるPowerGPUのCEO/創設者Jese Martinez氏は、エントリーレベルからミッドレンジのRTX 5090モデルが本来の希望小売価格(MSRP)1,999ドルを大幅に上回る3,050〜3,100ドルで卸売業者から提供されていると明らかにした。
「PowerGPUでこれらの5090の価格を提示する際、私たちが転売しているわけではなく、GPUの価格を上げて莫大な利益を得ているわけでもありません。私たちは文字通り、これらのGPUを狂ったような価格で販売されているのです」とMartinez氏は説明している。
システムインテグレーターへの影響と対応
この問題はPowerGPUだけに限らず、iBuyPowerやStormなど他のカスタムPC構築業者も同様の価格高騰に直面している。これらの企業は2,900ドルから3,300ドル以上の価格でRTX 5090を提供せざるを得ない状況である。
さらに問題を複雑にしているのは、卸売業者が高級モデル(ASUSのROG Astralなど)をバンドル販売する戦略を採用していることだ。これにより、システムインテグレーターはさらなるコスト増を強いられ、最終的に消費者への価格転嫁につながっている。特筆すべきは、ASUSのROG Astralカードがピンごとの電流測定機能を備えており、NVIDIA参照設計には欠けている安全面での利点がある点だ。
PowerGPUは最初のRTX 5090バッチの入荷に2〜3週間待たされ、その後も供給は極めて限られたままだという。同社が公開した在庫状況では、AMDのRX 9070シリーズが約70個ストックされているのに対し、RTX 5090はわずか1個という著しい差が明らかになった。
「私は恐ろしく感じます。ただただ不快です。文字通り、私のチーム全員がこれらの価格を見るとただただ嫌悪感を覚えます」とMartinez氏は述べている。
AMDとの比較と消費者への影響
対照的に、AMDのRadeon RX 9070シリーズの発売は比較的順調だったとされる。AMDはRadeon RX 9070およびRX 9070 XTの大量在庫を確保し、複数のボードメーカーと提携することでより広範な入手性を保証する戦略を取った。
ただし、AMDの製品も完全に問題がないわけではない。一部の小売業者はRadeon RX 9070シリーズの価格をMSRPから最大130ドル引き上げており、NVIDIAのGPUで見られるインフレーションと同様のパターンが現れている。それでも全体としては、消費者はAMD製品をより少ない遅延と安定した価格で購入できる傾向にある。
現状では、多くの消費者が中古市場に目を向けざるを得なくなっている。特にAmpere(GeForce RTX 30シリーズ)やRDNA 2/3世代のGPUは中古市場で広く入手可能であり、新品の高騰価格を避ける選択肢となっている。
業界への影響と今後の見通し
この状況は新型コロナウイルス感染症パンデミック時の2020-2021年のGPU不足を彷彿とさせるものとなっている。すでに前世代のRTX 4090などの在庫も2023年10月頃から枯渇し始めており、新世代GPUへの需要が集中する要因となっている。
特にNVIDIAのGPUは、ゲーミング用途だけでなくAIワークロードにも高い需要があるため、多くのユーザーがハードウェア入手のために定価以上の支払いをいとわない状況が生まれている。
この供給不足と価格高騰は、システムインテグレーターの評判にも悪影響を及ぼしている。多くの消費者は高価格での販売をシステムインテグレーター自身の利益追求と誤解しがちだが、実際には彼らも卸売段階での価格高騰の被害者となっているのである。
NVIDIAが早急にこの状況を改善するための対策を講じない限り、RTX 5090の価格正常化は当面見込めそうにない。一般消費者にとっては、以下の選択肢を検討する価値があるだろう:
- 中古市場からのRTX 30シリーズまたは40シリーズGPUの調達
- 比較的入手しやすいAMDのRX 9070シリーズへの乗り換え
- 価格が落ち着くまで現行GPUでの運用継続
- 公式ストアやメーカー直販チャネルでの在庫監視アプリの活用
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