人気ゲームプラットフォームRobloxは、Googleとの新たな提携を発表した。これにより、クリエイターはゲーム内で「リワード(報酬)ビデオ広告」を提供できるようになり、ユーザーは広告視聴の見返りにゲーム内特典を得られる。広告主にとっては、Googleの広告システムを通じてRobloxの膨大な若年層ユーザーへリーチする新たな道が開かれることになる。
Roblox、新たな収益化の柱「リワードビデオ広告」導入
Robloxは、プラットフォームにおける新たな広告フォーマットとして「リワードビデオ広告(Rewarded Video Ads)」を今後数週間以内に提供開始すると発表した。これは、ユーザーが自らの意思で(オプトイン形式で)最大30秒間の全画面ビデオ広告を視聴することで、そのゲームのクリエイターが設定したゲーム内特典(パワーアップやゲーム内通貨など)を受け取れる仕組みである。
この導入を加速させるため、RobloxはGoogleと提携を結んだ。これにより、広告主はGoogleの広告ソリューション(Google アド マネージャー)を通じて、プログラムによる自動買い付け(プログラマティックバイイング)および直接買い付け(Direct IO)の両方で、この新しいリワードビデオ広告枠を購入できるようになる。
Robloxが「没入型広告」と呼ぶこの取り組みは、単に広告を表示するだけでなく、ゲーム体験の中に自然に組み込むことを目指している。先行テストでは、広告の平均完了率が80%を超え、一部のゲーム体験では90%以上を記録。Latitudeとの調査によれば、Robloxユーザーの85%が体験内の報酬を提供するブランドに感謝の気持ちを示し、87%のユーザーがRoblox上の報酬付きビデオ広告フォーマットに好意的な意見を持っているという。
クリエイター、広告主、ユーザーにもたらす価値
今回の提携と新広告フォーマットの導入は、Robloxエコシステムに関わる三者にそれぞれメリットをもたらすものだ。
- クリエイターにとって: Roblox上でゲームや体験を提供するクリエイターは、新たな収益化の手段を得ることになる。リワードビデオ広告からの収益が見込めるだけでなく、ユーザーに報酬を提供することで、ゲームへのエンゲージメントを高める効果も期待できる。Googleとの連携により、広告枠への需要増加も見込まれる。
- 広告主にとって: Robloxは日間アクティブユーザー数(DAU)が8,500万人(2024年第4四半期時点で5,000万人以上が広告表示対象の13歳以上)を超え、世界最大級のゲームプラットフォームへと成長している。Google アド マネージャーを通じて広告を購入できるようになったことで、ブランドや広告代理店は、使い慣れたツールで効率的に、この巨大なターゲットオーディエンスにリーチし、広告キャンペーンを展開することが可能になる。
- ユーザーにとって: ユーザーは、広告視聴を選択することで、課金せずともゲーム内特典を得られる新しい方法を手に入れる。これにより、ゲーム体験がより豊かになる可能性がある。一方で、モバイルゲームで一般的なリワード広告と同様に、広告視聴がゲームプレイの流れを中断させる可能性や、広告表示の頻度によっては煩わしさを感じる可能性も指摘されている(Android Police)。Robloxは、ユーザー体験を損なわないよう、広告基準を遵守するとしている。
Google Ad Manager統合と測定体制の強化
Robloxが自社の広告技術スタックにGoogle アド マネージャーを追加したことは、広告事業を迅速に拡大するための重要な一手だ。これにより、多くの広告主が利用している既存の広告購入プラットフォームを通じて、Robloxの「没入型広告」フォーマットへのアクセスが格段に容易になる。
さらにRobloxは、広告効果測定の透明性と信頼性を高めるため、業界をリードする複数の第三者測定企業とのパートナーシップを強化・新規締結したことを発表した。
- DoubleVerify (DV) および Integral Ad Science (IAS): 広告詐欺対策、ブランドセーフティおよび適合性(Brand Safety and Suitability)、ビューアビリティ(広告が実際にユーザーに見られたか)といったメディア品質に関する測定ソリューションを提供する(IASのブランドセーフティ/適合性プレビッドソリューションは、対応DSP経由のプログラマティック購入で利用可能)。
- Cint: ブランドリフト調査(広告接触によるブランド認知度、検討度、意向の変化を測定)を実施する。
- Kantar: ブランドエクイティや行動変容(認知度、好意度、購入意向など)に対するキャンペーンROI(投資収益率)を測定・最適化する。
- Nielsen: Nielsen ONE Adsを通じて、クロスプラットフォームでのキャンペーン測定(重複を除いたリーチやフリークエンシー指標)を可能にする。
これらの連携により、広告主はGoogle独自の測定・ブランドセーフティツールに加え、信頼性の高い第三者のツールを用いて、Roblox上での広告投資の効果を正確に把握し、他の広告キャンペーンと比較検討することが可能になる。
Roblox広告戦略の今後

Robloxは、2025年に向けてビデオ広告フォーマットの普及とスケールを主要な焦点としつつ、Robloxならではのユニークな広告フォーマットの開発・拡大にも注力していく方針を示している。
現在提供されている「ビルボード広告(旧称:ビデオ広告、画像広告)」のような既存の没入型フォーマットも、今後Google アド マネージャー経由で購入可能になる予定である。また、GoogleのAuthorized Buyersソリューションを通じて、PubMaticなどの主要なサプライサイドプラットフォーム(SSP)やデマンドサイドプラットフォーム(DSP)との接続も進められる。
さらに、以下のような新しい広告フォーマットや機能の開発も進められている。
- Premium Home ad unit: Robloxのホームページ上の1行全体を24時間独占し、大規模なリーチを獲得できる広告ユニット。既に「Beetlejuice Beetlejuice」などのブランドがパイロット段階で活用している。
- Sponsored Experience ads: よりエンゲージメントを高める形のスポンサード体験広告。
- コマース連携: 広告による認知や興味関心を、実際の購買行動に結びつけるためのより深い連携機能。
Robloxのグローバルブランドパートナーシップおよび広告担当バイスプレジデントであるStephanie Latham氏は、「この新しいフォーマットは、ブランド、クリエイター、ユーザーにとってWin-Win-Winであり、テストの初期結果に興奮しています。Googleとのパートナーシップにより、これらの魅力的な広告を簡単に購入し、主要なオーディエンスに大規模にリーチすることが可能になります」と述べている。
背景:巨大プラットフォームRobloxの現状
Robloxは、日間アクティブユーザー数(DAU)でSteamをも上回る8,500万人、月間アクティブユーザー数(MAU)では3億8,000万人という巨大なユーザーベースを持つ。2024年には総収益36億ドル(前年比29%増)を達成し、プラットフォーム上で活動するクリエイターコミュニティには9億2,300万ドルを支払うなど、経済圏としても大きな成功を収めている。
特にZ世代からの支持が厚く、彼らがオンラインで過ごす時間の多くを占めるプラットフォームとなっている点は、広告主にとって極めて魅力的である。今回のGoogleとの提携によるリワード広告の導入は、モバイルゲーム市場で既に広く普及しているマネタイズ手法を取り入れつつ、Roblox独自の没入型体験と組み合わせることで、広告事業をさらに成長させようとする戦略的な動きと言えるだろう。
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