GoogleはAndroid 16の最新ベータ版である「Beta 4」をリリースした。これは安定版公開に向けた開発プロセスの最終段階「プラットフォームの安定版(Platform Stability)」に到達したことを示唆しており、主要なAPIやシステムの動作はほぼ確定した。本記事では、Android 16 Beta 4で確認された新機能、変更点、そして修正された不具合について、Pixelデバイスでの実機検証に基づき詳しく解説する。
プラットフォーム安定版へ:Android 16開発は最終コーナーに
Android 16 Beta 4のリリースは、Googleが定める開発タイムラインにおける重要なマイルストーンである。これは「プラットフォームの安定版」と呼ばれる段階の2回目のリリースであり、アプリ開発者はこのバージョンを基に最終的な互換性テストを行うことが推奨される。

Googleによると、Android 16の正式リリースは2025年第2四半期(4月〜6月)を目標としており、開発は順調に進んでいる。今回のBeta 4は、5月または6月に予定されている安定版リリース前の最後のメジャーベータ版となる可能性が高い。
対象デバイスと提供状況
Android 16 Beta 4は、以下のPixelデバイス向けにOTA(Over-the-Air)アップデートとして配信が開始されている。
- Pixel 6 / 6 Pro / 6a
- Pixel 7 / 7 Pro / 7a
- Pixel Tablet
- Pixel Fold
- Pixel 8 / 8 Pro / 8a
- Pixel 9 / 9 Pro / 9 Pro XL / 9 Pro Fold / 9a (Pixel 9aは今回からベータプログラム対象に追加)
ベータプログラムに登録済みのユーザーには順次アップデート通知が届くが、手動でファクトリーイメージやOTAイメージをダウンロードしてインストールすることも可能だ。アップデートファイルのサイズは約1GB程度と報告されている。
また、GoogleはOnePlusやXiaomiに続き、さらに多くのメーカーがAndroid 16ベータプログラムに参加することも明らかにしている。
Android 16 Beta 4の新機能と変更点
Beta 4は主に安定性の向上とバグ修正に焦点が当てられているが、いくつかの新機能やUIの微調整も確認されている。以下に主な変更点を挙げる。
- 一部のAOD(常時表示ディスプレイ)クロックにDynamic Color適用
選択した壁紙に基づいて、AOD画面の時計の色が変化するようになった。ただし、すべての時計スタイルで確認されているわけではないようだ。 - アプリアイコン長押しメニューに「スクリーンショット」と「選択」追加
ホーム画面やアプリ一覧でアプリアイコンを長押しした際のメニューに、「スクリーンショット」と「選択」(最近使ったアプリ画面のテキスト選択機能と同様のもの)のオプションが追加された。 - メディアプレーヤーのアートワークが暗めに
ロック画面やクイック設定に表示されるメディアプレーヤーのアルバムアートワークなどの背景色が、以前より暗く表示されるようになった。 - 「バッテリーの状態」表示が一部で消失(不具合の可能性あり)
Android 15で導入され、ベータ版でテストされていたバッテリーの最大容量目安を表示する機能が、Beta 4アップデート後、一部のデバイスで設定メニューから消えているとの報告が複数ある。しかし、筆者のデバイス(Pixel 9 Pro XL)では表示が残っており、また、設定アプリの強制停止やデバイスの再起動で再表示されたという報告もあるため、一時的な不具合か、あるいは仕様変更の過程である可能性がある。現時点では断定できない。 - テーマ別アイコンの「ベータ版」バッジが削除
アイコンの形や色を壁紙に合わせる「テーマ別アイコン」機能。設定画面で長らく表示されていた「ベータ版」のバッジが、Beta 4でついに削除された。これにより、同機能が正式版扱いになったと見られる。ただし、皮肉なことに、この変更は安定版チャネルのAndroid 15 QPR2で既に適用されていたため、ベータ版が安定版に追いついた形となる。 - ジェスチャーナビゲーションのデモ画面
設定アプリ内の「表示とタッチ」>「ナビゲーション モード」>「ジェスチャー ナビゲーション」の設定(歯車アイコン)内に、操作方法をデモンストレーションする新しい画面が追加された模様だ。 - Pixel Launcher長押しに「アプリのリスト」ショートカット
Pixel Launcher(ホーム画面アプリ)を長押しした際のメニューに、「アプリのリスト」へ直接アクセスできるショートカットが追加された。

消えたトグル:「画面オフ時の指紋認証ロック解除」機能の行方
Android 16 Beta 4では、意図的な変更か不具合か不明な点として、「画面オフ時の指紋認証ロック解除 (Screen-off Fingerprint Unlock)」のオン/オフトグルが設定メニューから消えていることが複数のユーザーによって報告されている。
この機能は、Android 16 DP2でPixel 9向けに導入され、Beta 3でPixel 6以降のモデルにも展開されていた。画面が完全にオフの状態でも、指紋センサー部分に指を置くだけで直接ロック解除できるため、特に画面内指紋センサー搭載機種(Pixel 6以降)において、ロック解除までのステップを一つ減らし、より高速な操作を可能にする便利な機能だ。SamsungやOnePlusなどの他社製Androidスマートフォンでは標準的な動作である。
幸いなことに、Beta 4へアップデートする前にこの機能をオンにしていたユーザーは、トグルが消えた後も機能自体は引き続き動作すると報告されている。指を置けば画面オフから直接ロック解除できる状態は維持されているようだ。
しかし、問題はトグルが消えたことにより、この機能を新たに有効化したり、逆に無効化したりする手段がなくなったことだ。もしBeta 4にアップデートする前に機能をオフにしていた場合、現状では有効化できない可能性がある。
このトグルの消失が、単なるベータ版の不具合であり、今後のアップデートで修正されるのか、それともGoogleがこの機能をPixel 9シリーズ(超音波式指紋センサーを搭載すると噂されている)専用にするなどの意図があって削除したのかは、現時点では不明である。安定版のリリースを待つ必要があるだろう。
解決された主な問題点:安定性向上への注力
Googleのリリースノートによると、Android 16 Beta 4では、開発者やユーザーから報告された多数の問題が修正されている。主な修正点は以下の通り。
- 開発者およびユーザーから報告された問題:
- Pixel Weatherアプリでレーダーマップが表示されなくなる問題 (Issue# 407282089)
- 触覚フィードバックのパフォーマンスに影響し、遅延が発生する問題 (Issues # 400455826, 398829454)
- 一部のデバイスで過度の電力消費が発生する問題 (Issue # 395519809)
- 特定の状況で電話に応答するとシステムが再起動する問題 (Issue # 402639338)
- 画面拡大機能が有効な場合に再起動が発生する問題 (Issue # 408330740)
- スクリーンセーバーが起動しない問題 (Issue # 398963286)
- 測距APIの使用時に電話が再起動する問題 (Issue # 406577030)
- その他の解決された問題:
- ランチャーのクラッシュを含む、システムの安定性とパフォーマンスに影響を与えるその他の様々な問題。
これらの修正により、Beta 4は以前のバージョンよりも安定した動作が期待される。
安定版リリースは間近か
Android 16 Beta 4のリリースにより、開発は最終段階に入った。GoogleはQ2 2025内のリリース目標を改めて示しており、早ければ5月に開催される可能性のある開発者向け会議「Google I/O 2025」での発表、あるいは6月頃のリリースが現実味を帯びてきた。
今後、Beta 4.1のような、さらなるバグ修正を中心としたマイナーアップデートがリリースされる可能性はあるが、大きな機能変更が行われる可能性は低いだろう。
Android 16の正式リリースは、Pixelデバイスだけでなく、SamsungのOne UI 8.0など、各メーカーのカスタムUIのベースともなるため、業界全体にとっても重要な節目となる。今回のBeta 4で見られた変更点や安定性の向上は、次期Androidエコシステム全体の進化を占う上で注目に値する。
Sources
- Android Developers Blog: The Fourth Beta of Android 16
- 9to5Google: Here’s everything new in Android 16 Beta 4 [Gallery]