日本でも人気のオンラインゲーム『原神』や『崩壊:スターレイル』の開発を行っている中国のmiHoYoが資金を提供した核融合スタートアップ「Energy Singularity」が世界初の完全高温超電導トカマク炉となる「HH70」によって、初プラズマ生成に成功したと発表した。これは民間企業によって構築された世界初のトカマク型核融合炉の成功例となる。
従来のトカマクと比較して小型で安価
Energy Singularityは、2021年にmiHoYoと同じ中国・上海に設立された核融合スタートアップだ。2022年にmiHoYoや、中国の電気自動車メーカーNIOらによって6,500万ドル(当時)もの巨額資金調達が行われ、2024年のトカマク型実験炉の稼働を目指して開発が進められていた。
究極のエネルギー源として開発が進められている核融合炉は、水素原子を融合させヘリウムを生成する過程で副産物として発生する大量のエネルギーを利用することを目的に構築されている。
この反応は現実に太陽で発生している物で、研究者らは、いくつかの方法によってこれを地球上で再現しようとしている。その一つが「トカマク型」だ。トカマク型は、超高温のプラズマを磁場によって閉じ込め、これによって核融合を引き起こす装置で、将来の核融合炉実現に最も有力とされる方式の一つである。
この技術を用いて、科学者たちは近年、核融合反応から純エネルギーを得ることに成功している。しかし、トカマクは従来、大型の装置であり、建設コストも高い。
Energy Singularityは、従来の概念を打破することを目指し、実験炉「HH70」を開発したという。同社共同設立者兼CTOのGuo Houyang氏によれば、HH70は、小型で生産コストも安く、将来的には商業的に実現可能な核融合炉への道を開くことを可能にするという。
Energy SingularityのCEOであるYang Zhao氏によれば、同社の「HH70」実験炉は独自の知的財産権を有し、国産化率は96%以上であり、すべての磁石システムは高温超電導材料を使用して構築されているとのことだ。
HH70は、REBCOとして知られる高温超電導(HTS)材料から作られた磁気システムを使用しているという。REBCOは希土類バリウム銅酸化物の略で、大規模に生産できるため、調達コストが安価である。このため、Energy Singularityはトカマクを非常に安価に製造できるのだ。
さらに、同社はこの材料を用いることで、従来のトカマクのわずか2%の体積でトカマクを製造できると主張している。
「装置の設計作業は2022年3月に開始され、今年2月末までに全体の設置が完了し、世界で最も速い超電導トカマク装置の研究と建設記録を打ち立てました」とYang氏は述べている。
HH70の稼働成功により、Energy Singularityは世界初かつ現在唯一の完全高温超電導トカマクを構築・運用するチームとなったと共に、完全超電導トカマクを構築・運用する世界初かつ現在唯一の商業企業となっている。
今後同社が目指していくのは純粋な出力だ。核融合炉の性能は、反応によって生成されるエネルギーと反応を維持するために必要な入力エネルギーの比率を示すQ値で測定される。現在、トカマクで得られた最高のQ値は1.53である。Energy Singularityは2027年までに次世代の高磁場高温超電導トカマク装置である「HH170」を建設し、Q値10のエネルギー利得を目指すという。
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