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制裁下のHuawei、AIチップ開発が2026年まで7nmプロセスに足止め – NVIDIA との技術格差が拡大

Y Kobayashi

2024年11月21日

米中ハイテク覇権争いの渦中にあるHuaweiのAIチップ開発が、米国主導の制裁により深刻な停滞を強いられている。同社の次世代AI処理装置「Ascend」シリーズは、2026年まで7nmプロセスに留まる見通しとなり、最新の2nmプロセスへと進むライバル各社との技術格差は更なる拡大が予想される。

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制裁による製造技術の制約

Huaweiは現在、自社のAIアクセラレータ「Ascend」シリーズの開発において、7nmプロセスノードでの製造を余儀なくされている。これは、オランダASML社の最新EUV(極端紫外線)露光装置へのアクセスが、米国の制裁措置により遮断されているためだ。EUV装置は、より微細な半導体製造に不可欠な技術とされている。

同社は中国国内の半導体製造大手SMIC(中芯国際集成電路製造)と協力し、DUV(深紫外線)露光装置を用いたマルチパターニング技術で7nmチップの製造を続けている。しかし、この手法は工程が複雑で製造時間が長く、品質の安定性にも課題があるとされる。特に、マルチパターニング技術では、回路パターンを複数回に分けてシリコンウェハ上に「印刷」する必要があり、各工程での位置合わせの精度が製品の歩留まりに大きく影響する。

現状では、SMICの製造能力は需要に追いついておらず、生産性の問題も深刻化している。この背景には、中国政府による国産装置使用の圧力も影響している。旧式の製造装置を用いた生産は、西側諸国の従来の製造技術と比較しても、品質維持に苦心する状況が続いているという。

特筆すべきは、Huaweiが既存の露光装置を本来の設計限界を超えて使用している可能性も指摘されている点だ。同社は今夏、本来の装置性能では困難とされる7nmプロセスのKirinチップの開発に成功し、スマートフォンMateシリーズに搭載。しかし、この「成功」は持続可能な製造プロセスの確立を意味するものではなく、むしろ制裁下での限界に挑戦する同社の切迫した状況を反映した物と言える。

このような製造技術の制約は、単にチップの製造プロセスの問題だけでなく、Huaweiの製品開発戦略全体に影響を及ぼしている。同社は現在、技術的制約の中で最大限の性能を引き出すための設計最適化に注力せざるを得ず、これが結果として次世代技術への移行を更に遅らせる要因となっている。

深まる技術格差

Huaweiが直面している技術格差は、半導体産業における構造的な競争力の差として顕在化している。現在、台湾TSMCは2024年に2nmプロセスの量産開始を予定しており、この最先端プロセスは次世代iPhoneへの搭載も視野に入れられている。一方、Huaweiは2026年まで7nmプロセスでの製造を継続せざるを得ない状況に置かれている。この技術的な隔たりは、TSMCが2018年に確立した技術水準に相当し、実に8年もの開発格差が固定化されることを意味する。

この状況下で、AIチップ市場における覇者NVIDIAは、TSMCの4nmプロセス技術を採用したH100シリーズで市場をリードしている。Huaweiが今夏に発表したAscend 910cは、確かにNVIDIAのH100に対抗する意欲的な製品として注目を集めたものの、7nmプロセスでの製造という制約は、性能面での本質的な競争力に大きな影を落としている。

特に深刻なのは、製造パートナーであるSMICが現行の7nmプロセスチップの需要にすら十分に対応できていない現状だ。これは単なる生産能力の問題ではなく、マルチパターニング技術を用いた製造プロセスの複雑さと、それに伴う歩留まりの低さが根本的な課題となっている。結果として、HuaweiのAIアクセラレータ事業の拡大は、量的な制約にも直面している。

この技術格差は、消費者向け製品市場においても深刻な影響を及ぼしている。Huaweiの主力スマートフォンMateシリーズは、自社開発のKirinチップを搭載しているが、同様に7nmプロセスの制約下にある。競合他社が3nmプロセス採用の最新プロセッサを投入する中、この技術的格差は製品競争力に直接的な影響を与える。

さらには、この技術格差が時間の経過とともに幾何級数的に拡大する可能性である。半導体製造技術の進歩は、単純な線形的な進化ではなく、新世代のプロセスノードごとに革新的な技術の統合が必要とされる。そのため、現在の7nmプロセスでの停滞は、将来的な技術キャッチアップをより困難にする要因となっている。この状況は、中国の半導体産業全体の発展戦略にも重大な課題を投げかけている。

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Xenospectrum’s Take

制裁によるHuaweiの技術的停滞は、グローバルなAI開発競争の様相を根本から変えつつある。TSMCの元従業員に3倍の給与を提示してまで人材獲得を図る同社の必死な姿勢は、技術覇権を巡る米中対立の深刻さを如実に物語っている。

皮肉なことに、この状況は中国の半導体自給自足への渇望を一層強める結果となっており、結果的に世界の半導体サプライチェーンの分断を加速させかねない。2026年までの技術格差固定化は、グローバルなAI開発競争において、取り返しのつかない遅れを生む可能性がある。


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