核融合エネルギーの未来が、驚くほど鮮やかに目の前に広がる。スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)の研究チームが、トカマク型核融合炉の内部で起こる複雑な物理現象を、リアルタイムの3D可視化技術を用いて再現することに成功した。この画期的な取り組みは、一般の人々が、核融合反応という、およそ現実とはかけ離れた不思議な現象を理解するための一助となる物になるだろう。
驚異的な精度で再現されるトカマク型核融合炉の内部
EPFLの実験博物学研究所(EM+)とスイスプラズマセンター(SPC)の共同研究チームは、variable-configuration tokamak (TCV)と呼ばれる実験用核融合炉の内部を、驚くほど精密に再現した3D可視化システムを開発した。
EM+のコンピューターサイエンティスト、Samy Mannane氏は次のように説明する。「ロボットを使用して炉内部の超高精度スキャンを生成し、それらをコンパイルして3Dモデルを作成しました。このモデルは、テクスチャに至るまでコンポーネントを忠実に再現しています」。
可視化システムは、高さ4メートル、直径10メートルのパノラマディスプレイに投影される。この巨大な画面には、トカマク内部の様子が驚くべき精度で表示される。グラファイトタイルで覆われた炉壁、1億度を超える高温に耐える部品、そして粒子を注入する装置まで、すべてが細部まで再現されている。
さらに驚くべきは、このシステムがリアルタイムで動作することだ。Mannane氏によれば、「1つの画像を生成するだけでも、システムは各目につき1秒間に60回、数千個の移動粒子の軌道を計算しなければなりません。」この膨大な計算を処理するため、研究チームは2基のGPUを搭載した5台のコンピューターを導入した。
可視化された映像では、電子は赤、陽子は緑、磁場は青い線で表現される。数千個の粒子が渦を巻きながら飛び交う様子は圧巻で、観察者は自分が小さな存在に感じられるほどだ。ユーザーはパラメーターを調整することで、炉の特定の部分を任意の角度から観察することができる。
SPCのディレクター、Paolo Ricci氏は、この技術の意義を次のように述べている。「可視化技術は天体物理学の分野ではプラネタリウムのおかげでかなり進んでいます。しかし核融合の分野では、EM+との共同研究のおかげで、ようやくこの技術を使い始めたところです」。
この3D可視化技術は、科学者たちにとって貴重なツールとなるだけでなく、一般の人々にとっても未来のエネルギー源を体感できる機会を提供している。複雑な物理現象をわかりやすく表現することで、核融合エネルギーの研究開発への理解と支援が広がることが期待される。
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