NVIDIAのCEO、Jensen Huang氏がTSMCに専用のチップパッケージング製造ラインの設置を要請したものの、断られたことが台湾メディアによって伝えられている。半導体業界で重要性を増すパッケージング技術をめぐり、AI市場をリードするNVIDIAと世界最大の半導体受託製造企業TSMCの間では緊張感のある駆け引きが繰り広げられているようだ。
NVIDIAの要請をTSMCが拒否、緊張した会談に
台湾メディア聯合新聞の報道によると、今年6月にJensen Huang氏が台湾を訪問した際、TSMC本社で行われた会談で、NVIDIA専用のCoWoS(Chip on Wafer on Substrate)パッケージング製造ラインの設置を要請したという。しかし、この要請はTSMCの上層部から丁重に断られることとなった。
情報筋によれば、予想外のTSMC側の拒否により、会談の雰囲気は緊張したものとなったようで、Huang氏とTSMC幹部陣の双方が強い口調で主張を展開し、建設的な結論には至らなかったとされる。
この出来事は、AIチップの需要急増に伴うパッケージング能力の逼迫を浮き彫りにしている。TSMCのC.C. Wei CEOは、先日の決算説明会で「CoWoSの需要は非常に強く、台積電は継続的に生産能力を拡大している」と述べ、2025年から2026年にかけて需給バランスの改善を目指していることを明らかにした。
現在、TSMCはNVIDIAとAMDのために全てのCoWoSパッケージング能力を確保していると報じられている。しかし、NVIDIAが独占的な製造ラインを求めたことで、両社の関係に新たな緊張をもたらした可能性がある。
TSMCは2022年から2026年までの間にCoWoS生産能力を年平均60%以上増加させる計画を立てているが、それでも需要に追いつかない状況が続いている。Wei CEOは「2024年と2025年のCoWoS生産能力は、それぞれ倍増以上になる」と予測している。
一方で、TSMCはパッケージング技術を含む「Foundry 2.0」という新しい事業定義を打ち出し、半導体バリューチェーンにおける自社の位置づけを強化しようとしている。Wei博士によるFoundry 2.0の定義では、「パッケージング、テスト、マスク製造、その他、メモリ製造を除くすべてのIDM」が含まれる。この動きは、純粋なチップ製造とは対照的に、パッケージング技術が半導体産業において重要性を増していることを示している。
NVIDIAとTSMCの今回の出来事は、AIチップ市場の急成長と、それに伴う製造能力の逼迫が引き起こす業界内の緊張関係を象徴しているといえるだろう。両社の関係性の行方は、今後のAI産業の発展に大きな影響を与える可能性がある。
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