中国が世界最速のスーパーコンピューターを秘密裏に保有している可能性が浮上した。長年にわたり米中両国の科学者たちが協力してきたスーパーコンピューター開発だが、近年の米国による技術規制強化を受け、中国側が急速に情報公開を控えるようになった。この状況下で、スーパーコンピューター分野の権威が、中国の最新マシンが米国を凌駕している可能性を指摘し、注目を集めている。
中国の秘密主義化と米国の懸念
スーパーコンピューターの性能を競う国際的なランキング「Top500」の共同創設者であるJack Dongarra氏は、中国が世界最速のスーパーコンピューターを保有している可能性が高いと指摘している。Dongarra氏はWall Street Journalのインタビューに対し、「中国はより高速なマシンを持っています。ただ、彼らはその結果を提出していないだけです」と述べた。
この発言の背景には、中国のスーパーコンピューター開発を取り巻く環境の変化がある。2015年以降、米国政府は中国のスーパーコンピューター開発者に対するIntel製チップなどの米国製ハードウェアの輸出を制限し始めた。トランプ政権下の2019年にはさらに広範な輸出規制が導入され、バイデン政権下でもその規制は強化されている。
これらの規制に対し、中国側は情報公開を控えるようになった。Dongarra氏によると、中国の同僚たちはスーパーコンピューターに関する情報提出を許可されていないと語っているという。この新たな秘密主義は、人工知能やその他の技術開発の進展を遅らせる可能性があると西側の科学者たちは懸念している。
現在、公式には米国のオークリッジ国立研究所にある「Frontier」が世界最速のスーパーコンピューターとされている。しかし、中国の科学論文から、「Sunway」や「Tianhe-3」と呼ばれる中国のスーパーコンピューターがFrontierを上回る性能を持っている可能性が示唆されている。
特に注目されているのは、Sunwayマシンが3900万のコアを持つという点だ。これはFrontierの4倍の数であり、Sunwayの方が高性能である可能性を示唆している。
この状況は、単なる技術競争以上の意味を持つ。シンクタンクRand Corp.の技術分析担当上級顧問Jimmy Goodrich氏は、「相手がスーパーコンピューターを使って、戦闘機や兵器の射程、速度、精度をたとえ20%でも1%でも向上させることができれば、先に標的にされてしまいます。そうなればチェックメイトです」と述べ、スーパーコンピューターが国家安全保障に直結する重要性を指摘している。
中国のスーパーコンピューター開発の実態が不透明になる中、米国政府にとっては自国と中国のどちらがより高速なスーパーコンピューターを持っているかを把握することが困難になっている。この状況は、核兵器開発を含む軍事技術の進展に影響を与える可能性があり、米中間の技術覇権競争の新たな局面を示している。
Sources
- The Wall Street Journal: China Is Getting Secretive About Its Supercomputers
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