Android OSは、ことパフォーマンスにおいて、次期Android 15で大きな変化を迎えそうだ。Android 15において、Googleは新たなメモリ管理技術を導入し、16KBページサイズをサポートすることで、全体的な性能が5-10%向上する見込みだという。この変更により、ユーザーはアプリの起動速度向上、ゲームのパフォーマンス改善、そしてシステム全体のよりスムーズな動作を体験できるようになる可能性がありそうだ。
Android 15がもたらすメモリ管理の革新と性能向上
GoogleはBlog で、Androidが「ページサイズ不可知(page-size agnostic)」になると発表した。これは、従来の4KBページサイズに加えて、16KBページサイズもサポートすることを意味する。この変更は、一見すると技術的に些細なものに思えるかもしれないが、実際にはAndroidデバイスの性能に大きな影響を与える可能性を秘めている。
メモリ管理の基礎:MMUとページサイズ
この新技術を理解するには、まずCPUのメモリ管理ユニット(MMU)について知る必要がある。MMUは、プログラムが使用する仮想アドレスを物理メモリ上の実際の位置に変換する役割を担っている。この変換はページサイズと呼ばれる単位で行われる。
従来のAndroidは4KBページサイズに最適化されていたが、新しいアプローチでは16KBページサイズもサポートする。ページサイズが4倍になることで、オペレーティングシステムが行う「ページテーブル」エントリの作成作業が4分の1に減少する。
Googleの説明によると、「システムは低レベルのオペレーティングシステムの事務作業に費やす時間を減らし、動画の見栄えを良くし、ゲームをスムーズに動作させ、アプリケーションを円滑に実行することに、より多くの時間を費やすことができる」という。
具体的な性能改善
Googleが実施したテストでは、16KBページサイズの採用により、以下のような具体的な改善が確認されている:
- メモリ圧迫時のアプリ起動時間が平均3.16%短縮(一部のアプリでは最大30%の改善)
- アプリ起動時の消費電力が平均4.56%削減
- カメラの起動が高速化(ホットスタートで平均4.48%、コールドスタートで平均6.60%)
- システム起動時間が平均1.5%(約0.8秒)短縮
これらの改善は、特にリソースを多く消費するアプリケーションや、迅速な起動が求められるカメラアプリなどで顕著な効果を発揮すると予想される。
しかし、この新しいメモリ管理手法にもトレードオフがある。16KBページサイズの採用により、物理メモリ(RAM)の使用量が約9%増加することが分かっている。そのため、Googleは16KBページサイズの採用を、より大容量のRAMを搭載したデバイスの登場と同時に進めていく方針だ。
現在、Pixel 8とPixel 8 ProのAndroid 15 QPR1 Beta 1で、開発者向けに「Boot with 16KB page size」というテストオプションが提供されている。ただし、この機能を利用するにはデバイスのワイプとブートローダーのアンロックが必要なため、一般ユーザーの日常的な使用には適していない。
Googleは、より多くのデバイスでこのオプションを有効にするため、SoC(System-on-Chip)メーカーやOEM(Original Equipment Manufacturer)パートナーと協力して取り組んでいる。ただし、Android 15リリース時点で16KBページサイズをサポートする製品版Androidデバイスは登場しない見込みだ。
この変更は、アプリ開発者にとっても重要な意味を持つ。Googleは開発者に対して、16KBページサイズデバイス向けにアプリを再コンパイルすることを推奨している。ただし、同じアプリケーションバイナリが4KBと16KBの両方のデバイスで動作するため、開発者の負担は比較的軽いと考えられる。
ユーザーにとっては、この変更は将来的により高性能なAndroidデバイスの登場につながる可能性がある。特に、大量のRAMを搭載した次世代デバイスでは、16KBページサイズの恩恵を最大限に活かせると期待されている。
今後、Android開発者やデバイスメーカーがこの新技術をどのように活用していくか、そしてユーザーにどのような具体的なメリットをもたらすのか、注目が集まるところだ。
Source
- Android Developers Blog: Adding 16 KB Page Size to Android
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