ゲーム開発エンジンの大手であるUnityは、2023年9月に発表し、大きな論争を巻き起こしたランタイムフィーを完全に撤回すると発表した。この決定は、新CEOのMatt Brombergが就任してから約3ヶ月後に下されたもので、開発者コミュニティとの信頼関係を回復する重要な一歩となるが、同時に開発者にとっては大幅な値上げともなっている。
Unityの新料金体系:サブスクリプション制への回帰
Unityは、インストール数に基づく課金モデルを廃止し、従来のシート単位のサブスクリプション制に戻ることを決定した。Matt Bromberg CEOは公式ブログで、「私たちの使命を顧客と対立しながら追求することはできません。その核心には、信頼に基づくパートナーシップがなければなりません」と述べ、開発者との関係修復に向けた姿勢を示した。
新しい料金体系の主な変更点は以下の通りである:
- Unity Personal:無料プランの収益・資金調達の上限を10万ドルから20万ドルに引き上げ。Unity 6以降、Made with Unityのスプラッシュスクリーンがオプションに。
- Unity Pro:年間シート料金を8%値上げし、2,200ドルに設定。年間収益または資金調達が20万ドルを超える顧客が対象。
- Unity Enterprise:年間2,500万ドル以上の収益または資金調達がある顧客向けに、25%の値上げを実施。個別のカスタマイズパッケージが提供される。
これらの変更は2025年1月1日から適用される予定だが、既存のバージョンを使用し続ける顧客には、以前の契約条件が維持されるとしている。Bromberg CEOは、「今後は、潜在的な価格改定を年1回のサイクルで検討するという、より伝統的なアプローチに戻る意向です」と述べ、料金体系の安定化を約束した。
この決定は、多くの開発者から歓迎されている。昨年のランタイムフィー発表時には、小規模開発者への影響が特に懸念され、一部の開発者はアップデートの保留やエンジンの切り替えを検討するなど、強い反発を示していた。
Necrosoft GamesのBrandon Sheffieldは当時、Unityを「信頼できない会社」と批判していた。今回の方針転換により、開発者コミュニティとUnityの関係修復が期待される一方で、完全な信頼回復にはまだ時間がかかるとの見方もある。
Unityは、この1年間で多くの変化を経験した。ランタイムフィーの発表直後には、当時のJohn Riccitiello CEOが突如退任を発表。その後、2023年末から2024年初頭にかけて大規模なレイオフを実施するなど、財務状況の不安定さも露呈していた。
Matt Bromberg CEOは、「ゲーム開発の民主化」というUnityの使命を再確認し、顧客との信頼関係を重視する姿勢を強調している。「ゲームのランタイムフィーをキャンセルし、これらの価格変更を実施することで、すべての人のためにゲーム開発を改善するための投資を続けながら、より良いパートナーになることができます」と述べている。
今後、Unityは開発者との信頼関係を再構築しつつ、財務的な安定性を確保するという難しい舵取りを迫られることになる。新しい料金体系が開発者コミュニティに受け入れられ、Unityのプラットフォームとしての価値を高められるかが、今後の成長の鍵となるだろう。
業界は、Unityの今回の決定を注視している。この方針転換が、ゲーム開発エコシステム全体にどのような影響を与えるか、そしてUnityが失った信頼をどれだけ回復できるかが、今後のゲーム業界の動向を占う重要な指標となるだろう。
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