冷却装置のスタートアップ Frore Systems が、ノートパソコン、携帯ゲーム機、タブレットなどの機器内で動作するCPU、GPU、SoCの冷却を目的とした世界初の固体冷却装置「AirJet」を発表した。
Frore Systemsが「AirJet」と呼ぶ冷却チップは、発熱するチップの上に載せて、機械的なファンを使わずに空気を取り入れることで対象のチップを冷却するという。厚さは2.8mmで、上部にあるスリットから空気を取り入れ、発熱したチップから熱を奪い、側面から排気される。吸排気には、超音波振動する振動膜が用いられているという。同社は、この「ソリッドステート」冷却ソリューションにより、従来の方法を使用した場合と比較して、CPUの性能を2倍にすることができると主張している。同社は1億ドルの資金を確保し、現在Intelと提携し、2023年にも同社のノートパソコンEvoシリーズに同社の技術を搭載するとのことだ。
CPUには通常、最大消費電力でどれだけブーストできるかを示す「Tau値」がある。最大に電力を消費している状態はPL2と呼ばれ、ノーマル消費電力であるPL1と比較される。CPUがPL2に達すると、適切な冷却が行われない限り、その状態を維持することはできない。例えば、IntelのCore i9-10900KのCPUは、スロットダウンする前に56秒間PL2を維持することができる。Frore Systemsによれば、AirJetでは、シナリオによってはPL2の状態を無限に維持することができるという。これが、同社が「CPUの性能を2倍向上させる」という主張の中身だ。PCWorldのインタビューに応じたCEOのSeshu Madhavapeddy博士によると、1.8GHzのARMプロセッサに4台のAirJet Minisを搭載すれば、3.5GHzで “永遠に”動作させることができるという。x86用に作られたAirJet Proは、ファンを使えば1.4GHzではなく2.1GHzでPL1で動作させることができる。さらに、15インチのノートパソコンに搭載されたAirJetは、ファン付きで42dBAの音量を出すのではなく、わずか29dBAの音量を出すことができる。
AirJetは、銅製ヒートシンクと同じように固体素子だ。しかし、内部には超音波で振動する振動膜が含まれている。この振動によって、AirJetの上部にある吸気口に空気が吸い込まれる。AieJetの内部では、空気がヒートスプレッダから熱を奪う際に「脈動ジェット」に変換される。そして、最終的には側面に設けられた噴出口から排出される。
今のところ、同社はタブレットやノートパソコン、VRヘッドセットなど、薄型のポータブルデバイスもAirJet Mini製品のターゲットとしている。AirJet Miniは、クレジットカードのような外見で、サイズは縦41.5mm×横27.5mm×厚さ2.8mmだ。消費電力はわずか1W、騒音は21dBAと非常に静かでありながら、5.25Wの熱を除去することができる。AirJet Pro for x86は、当然ながら少し大きくなる。サイズは71.5mm×31.5mmで、厚さは同じ2.8mmだ。10.75Wの排熱が可能で、消費電力はわずか1.75Wだ。
Frore Systemsは、Intelと “エンジニアリングコラボレーション”を開始した。 これは金銭のやりとりはないが、Intelがその膨大なリソースを用いて、Froreが2023年に実現する可能性のある製品の市場投入を支援するようだ。その見返りとして、同社はIntelに、この技術を採用するためにマザーボード上のCPUソケット部分に加えられる変更について意見を出している。また、Frore社にエンジニアリングのターゲットを与え、同社のメンバーをバンガロールの施設に招き、デバッグ作業を行ってもらっている。また、IntelはFrore Systemsに対して、他社製品と統合するための指導も行っている。
実際に2023年のIntel製品にFrore Systemsの製品が搭載され、大きな飛躍が見られることが楽しみだ。
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