Googleの最新スマートフォン「Pixel 9」シリーズが、全モデルでUFS 3.1ストレージを採用していることが明らかになった。ただし、最新のUFS 4.0ではなく前世代の技術を選択したGoogleの決定は、一部のユーザーや技術愛好家から疑問の声が上がっているものの、実際の使用体験への影響は予想以上に限定的である可能性が高い。
Pixel 9でのUFS 3.1採用の影響は限定的か?
Googleは最近発表されたPixel 9シリーズの全モデルにおいて、ストレージにUFS 3.1を採用していることを正式に認めた。この決定は、高価格帯のストレージオプションを含む全てのモデルに適用されているようだ。対照的に、競合他社の多くは最新のUFS 4.0技術を採用している傾向にある。例えば、SamsungのGalaxy S24シリーズでは、最も安価な128GBモデルのみがUFS 3.1を使用し、256GB以上のモデルではより高速なUFS 4.0を採用している。
UFS 4.0は理論上、UFS 3.1の2倍の速度を実現できるとされている。実際のベンチマークテストでは、UFS 4.0を搭載したASUS Zenfone 11 Ultraがシーケンシャルリードで最大2.1GB/sを記録し、Pixel 9 Pro XLの911MB/sを大きく上回る結果となった。この数値だけを見ると、Pixel 9シリーズは明らかに不利に思えるかもしれない。
加えて、UFS 4.0には、ストレージ速度以外にもいくつかの利点がある。より大容量のストレージ(現在2TBまで対応)を実現できることや、省電力性能の向上(最大46%の消費電力削減)、さらにはエラー訂正能力の向上などが挙げられる。これらの特徴は確かに魅力的だが、Pixel 9シリーズでUFS 3.1が採用されていることが、実際のユーザー体験を大きく損なう可能性は低いと考えられる。
まず、日常的な使用におけるパフォーマンスの差は、これらの数値が示すほど顕著ではない可能性が高い。特に重要なのは、ランダムリードおよびライト速度の差だ。UFS 4.0デバイスでは、これらの速度が約30%向上するにとどまっている。この程度の差は、大型ゲームのロード時間にわずかな違いをもたらす程度であり、多くのユーザーにとっては気づきにくいレベルだと言える。
具体的な例を挙げると、典型的な200MBのアプリケーションのロード時間の差は約1秒程度と推定される。これは、CPUやRAMの速度が同等であると仮定した場合の数値である。1秒の差は確かに存在するものの、多くのユーザーにとってはストレスを感じるほどの遅延ではないだろう。
また、8K60fpsの高解像度動画録画など、高速ストレージが必要とされる用途においても、現代のスマートフォンは高度な圧縮技術を活用しているため、UFS 3.1でも十分な性能を発揮できる。実際、8K60fps動画の録画に必要な書き込み速度は約100MB/sと推定され、これはUFS 3.1の能力内に収まっている。
さらに、GoogleのPixelシリーズは大規模AIモデルと高性能なTensor G4チップセットを搭載しており、これらの組み合わせにより、ストレージ速度の制限を補完し、全体的なパフォーマンスを最適化できる可能性がある。特に、AI処理を活用した効率的な圧縮技術により、動画品質を維持しながら、ストレージへの負荷を軽減できると予想される。
こうした姿勢は、ベンチマークテストの結果ではなく、ユーザー体験を重視して開発を行っているとする最近のGoogle幹部の発言をなぞるものだ。実際のユーザー体験に影響がなく快適に使えるのならば、コスト削減の観点からもUFS 3.1ストレージを選択するというのも理に適っているだろう。
一方で、999ドル以上の高価格帯のフラッグシップスマートフォンにおいて、最新のストレージ技術が採用されていないことへの批判ももちろんある。特に、技術に詳しいユーザーや、大容量のデータを頻繁に転送する必要がある専門家にとっては、UFS 3.1の採用は物足りなく感じられるかもしれない。また、エントリーモデルの128GBという容量に対する不満の声も上がっており、ストレージ容量の選択肢の少なさも課題として指摘されている。
将来的な展望として、Google Pixel 10シリーズでは、TSMCの次世代3nmプロセスを採用したTensor G5チップセットと共に、より高速なストレージ技術が導入される可能性が高い。この進化により、AIパフォーマンスとストレージ速度の両面で大幅な向上が期待できる。競合他社との技術的な差別化や、より高度な用途に対応するためにも、今後のモデルでストレージ技術の更新が望まれるところだ。
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