AMDの次世代グラフィックスカード「RDNA 4」シリーズの詳細情報が複数の信頼できる情報源からリークされた。新シリーズはRX 9000として展開され、デスクトップおよびノートPC向けの広範なラインナップが予定されている。CES 2025での正式発表に先立ち、製品名とスペックの全容が明らかになった。
新たな命名規則とラインナップ構成
AMDは次世代GPUファミリーにおいて、従来のXX00という命名規則から大きく方向転換を図るようだ。新しい命名規則では、頭文字を9とし、第二文字を0、そして第三文字でSKUの階層を示す形式を採用する。この変更は、APU向けのRDNA 3.5アーキテクチャ搭載モデル(Strix Halo)がRX 8000シリーズとして展開されることを考慮したものと判断とされている。
これに伴い、フラッグシップモデルは当初RX 8800 XTとして開発されていたが、最終的にRX 9070 XTとして市場投入される予定だ。
デスクトップ向けラインナップは以下の5モデルで構成される:
- Radeon RX 9070 XT(Navi 48 GPU、64 CU、16GB GDDR6)
- Radeon RX 9070(Navi 48 GPU、56 CU、16GB GDDR6)
- Radeon RX 9060(Navi 48 GPU、48 CU、12GB GDDR6)
- Radeon RX 9050(Navi 44 GPU、32 CU、8GB GDDR6)
- Radeon RX 9040(Navi 44 GPU、28 CU、12GB GDDR6)
デスクトップ向けのフラッグシップモデルとなるRadeon RX 9070 XTにはNavi 48 GPUが搭載され、64基のコンピュートユニット(CU)と16GBのGDDR6メモリを256ビットのメモリバスで制御する構成を採用する。メモリキャッシュは合計64MBという大容量を確保している。
その下位モデルとなるRX 9070も同じくNavi 48 GPUを採用するが、CU数は56基に制限され、同じ16GBのメモリ構成と64MBのキャッシュを備える。さらにミドルレンジを担うRX 9060も同じNavi 48 GPUをベースとしながら、CU数を48基まで削減し、メモリ構成は192ビットバスで12GB、キャッシュは48MBとなる。
エントリークラスを担うNavi 44 GPU搭載モデルは、RX 9050とRX 9040の2モデルで展開される。RX 9050は32基のCUと8GBのメモリを128ビットバスで制御し、32MBのキャッシュを搭載。最もエントリーレベルとなるRX 9040は28基のCUと12GBのメモリを96ビットバスで制御する構成で、キャッシュは24MBとなる。
モバイル向けには、ハイエンドのRadeon RX 9070M XTを筆頭に、RX 9070M、RX 9070Sといった製品が用意される。また、RDNA 3.5アーキテクチャを採用するRX 8060S、RX 8050S、RX 8040Sといったモバイル向けGPUも同時期に展開される予定だ。さらに、既存のRDNA 3アーキテクチャをベースとしたRX 7750やRX 7650といったリフレッシュモデルの投入も計画されており、AMDは幅広い価格帯と性能帯をカバーする総合的な製品戦略を展開する構えを見せている。
価格帯とパフォーマンス予測
次世代RDNA 4シリーズの価格設定は、AMDの市場戦略を如実に反映している。上位チップとなるNavi 48 GPUを搭載するモデル群は、エントリーモデルのRadeon RX 9060が449ドルから、フラッグシップのRadeon RX 9070 XTが646ドルという価格帯に位置付けられる。この価格設定は、現行のRDNA 3世代と比較して、より幅広いユーザー層へのアプローチを示唆している。
一方、Navi 44チップを採用する下位モデルは、より予算を重視するユーザー向けに展開される。最もエントリー向けとなるRadeon RX 9040が179ドルという手の届きやすい価格から始まり、ミッドレンジのRadeon RX 9050が349ドルで提供される予定だ。この価格帯は、特にe-Sports市場や1080p解像度でのゲーミングを重視するユーザーを強く意識した設定となっている。
パフォーマンス面では、フラッグシップのRadeon RX 9070 XTに関する初期のベンチマーク結果が注目を集めている。3DMark Time Spyにおいて、グラフィックススコアで22,894ポイント、CPUスコアで16,310ポイントという数値を記録した。これはNVIDIAのGeForce RTX 4070 Tiと同等のパフォーマンスレベルを示している。しかし、この結果は開発段階のドライバーを使用した暫定的なものであり、最終的な製品版ではさらなる性能向上が期待される。
当初の予測では、Radeon RX 9070 XTはGeForce RTX 4080とRTX 4080 Super の間に位置するパフォーマンスを発揮すると見られていた。しかし、現時点でのベンチマーク結果はその期待値をやや下回っている。ただし、AMDのGPUは一般的に、ドライバーの最適化によって発売後も継続的な性能向上が実現されることで知られている。そのため、CES 2025での正式発表時には、より競争力のある性能数値が示される可能性が高い。
特筆すべきは、前世代のRadeon RX 7900 XTとの性能比較だ。現時点でのベンチマーク結果は、新世代のフラッグシップモデルが前世代のハイエンドモデルを上回る性能を示せていない可能性を示唆している。これは、AMDが価格対性能比の最適化に注力し、より現実的な価格帯でのマーケットシェア獲得を目指している証左とも解釈できる。最終的な性能評価は、完成されたドライバーと実際のゲームタイトルでのベンチマーク結果を待つ必要があるだろう。
Xenospectrum’s Take
今回のリークで明らかになった情報からは、AMDが市場戦略を大きく転換している様子が窺える。フラッグシップモデルをRX 9080ではなくRX 9070 XTとすることで、価格競争力を重視する姿勢を示している。ただし、IntelのArc B580が12GBのVRAMを標準装備する中、主力となるRX 9060が8GB構成を維持することは、ミッドレンジ市場での競争力に影響を与える可能性がある。
CES 2025ではNVIDIAもRTX 50シリーズ「Blackwell」を発表する予定であり、グラフィックスカード市場は新たな競争フェーズに突入する。AMDがどのような価格戦略と性能特性で市場に挑むのか、その展開に注目が集まる。
Sources
コメント