AIチャットボット「Claude」で知られるAI企業のAnthropicが、新たに最大20億ドル(約3000億円)の資金調達を計画していることが複数の報道により明らかになった。この調達が実現すれば、同社の企業価値は600億ドル(約9兆円)に達し、米国のスタートアップとして第5位の評価額となる。
急成長するAI企業の企業価値
Lightspeed Venture Partnersが主導する今回の資金調達では、前回のMenlo Ventures主導の調達時から企業価値が3倍以上に跳ね上がる見通しだ。企業価値600億ドルという評価額は、SpaceX、OpenAI、Stripe、Databricksに次ぐ規模であり、AI企業の評価額の高騰を象徴している。
現在の年間経常収益(ARR)は8億7500万ドルと報じられており、その大半が企業顧客との契約によるものとされる。この収益規模に対する600億ドルという評価額は、極めて高い売上倍率を示しているが、その背景には、AI市場の急速な成長への期待と、同社の技術力への高い評価がある。
特筆すべきは、同社のソフトウェア開発市場でのシェア拡大だ。Menlo Venturesの調査によると、AIを活用したソフトウェア開発市場におけるAnthropicのシェアは、直近で12%から24%へと倍増している。一方、市場リーダーであるOpenAIのシェアは50%から34%へと低下しており、市場構造が大きく変化している。OpenAIは2024年の収益予想を37億ドル、2025年には116億ドルと見込んでおり、現時点では収益規模で大きな開きがあるものの、Anthropicの成長率と市場シェアの拡大は、投資家からの高い評価につながっている。
この急成長の一因として、同社が画像や動画、音声などのマルチモーダル展開ではなく、テキストベースのAIモデル開発に特化している点も挙げられる。この戦略的な集中により、特定分野での技術的優位性を確立することに成功している。
戦略的パートナーシップの拡大
Anthropicは2023年以降、主要テクノロジー企業との提携を積極的に進めている。Googleからは最大20億ドル、Amazonからは40億ドルの出資を受け入れ、さらに2024年11月にはAWSが追加で40億ドルの投資を実施。AWSはAnthropicの主要なAIトレーニングインフラストラクチャパートナーとなっている。
同社は最新のAIモデル「Claude 3.5 Sonnet」を開発し、プログラミングスキルを測るベンチマーク「SWE-bench Verified」で49%のスコアを達成。6月のリリース版から16%の性能向上を実現した。今後はさらに高性能な「Claude 3.5 Opus」の開発も予定している。
Sources
- The Wall Street Journal: AI Startup Anthropic Raising Funds Valuing It at $60 Billion
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