英国の核融合炉、Joint European Torus(JET)は、核融合炉の最終テストでわずか0.21ミリグラムの燃料から69.26メガジュールの熱が得られた事を発表した。これは、米国の国立点火施設(NIF)が達成した正味のプラスエネルギーではないが、これまでのどの核融合反応よりも大きなエネルギー生成である。
このような実験は、クリーンで無限に近いエネルギー源としての核融合の可能性を解き放つのに役立つだろう、と研究者たちは述べている。
JETは1983年、イギリスのオックスフォードシャーで初めて運転を開始した。トカマクとして知られるそのドーナツ状の形状により、科学者たちは磁場を用いて水素原子を息をのむようなスピードまで加速させ、高温プラズマへと変化させることができる。このセットアップにより、核融合に必要な条件が整う。つまり、2つの軽い原子核が1つの重い原子核に結合し、その過程で膨大なエネルギーが放出されるのだ。
JETは40年の運転期間中、重水素(中性子を1個余分に含む水素)とトリチウム(中性子を2個余分に含む水素)の50対50の混合原子を使用した最初の原子炉になるなど、数々の核融合のマイルストーンを生み出してきた。
JETの科学運営リーダーであるFernanda Rimini氏は声明の中で、「私たちは、商業的な核融合エネルギー発電所で使用されるのと同じ混合燃料を使用して、核融合プラズマを確実に生成することができます」と、述べている。
しかし、この記録はJETにとって最後のものとなる。記録的な実験が行われた直後の2023年12月、プロジェクトは廃止された。研究者たちは現在、原子炉を解体するという骨の折れる作業を始めており、この作業は2040年まで続くと予想されている。しかし、その間に、トカマクの内部構造に逆行するプラズマの爆発がどのように影響したかなど、JETの特徴についてさらに多くのことを学びたいと考えている。また、放射性廃棄物を処分するためのより安全な方法を開発するのにも役立つだろう、と研究チームは述べている。
JETで得られた多くの遺産は、2025年に運転開始が予定されているフランス南部の巨大トカマク、国際熱核融合実験炉(ITER)の中で生き続けるだろう。この220億ドルをかけたプロジェクトは、非常によく似た核融合戦略を用いるが、規模ははるかに大きい。
ITERのPietro Barabaschi事務局長は声明の中で、「JETはそのライフサイクルを通じて、ITERの先駆けとして非常に役立ってきました。ここで得られた結果は、ITERに直接的かつポジティブな影響を与え、進むべき道を検証し、運転開始後の性能目標に向けてより速く前進することを可能にします」と、述べている。
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