中国が世界初のメルトダウン耐性原子力発電所の冷却システム停止テストに成功し、原子力発電の安全性に新たな一歩を踏み出した。山東省に建設された高温ガス冷却炉ペブルベッドモジュール(HTR-PM)は、従来の原子炉設計の弱点を克服し、受動的安全性を実現する画期的な設計を採用している。この成果は、原子力エネルギーの未来に大きな影響を与える可能性がある。
革新的な設計がもたらす安全性の向上
この新型原子炉は、高温ガス冷却炉ペブルベッドモジュール(High-Temperature gas-cooled Reactor Pebble-bed Module: HTR-PM)と呼ばれる技術を採用した、“第4世代”の原子力発電所とされている。従来の原子炉と異なり、HTR-PMは「ペブル」と呼ばれる小さな低エネルギー密度の燃料球を使用する。これらの燃料球は、ウラン含有量が少なく、中性子の活動を制御するグラファイトに囲まれており、核反応を減速させることで発熱を抑制することが可能となっている。
この設計の最大の特徴は、外部電源に依存せずに自然冷却が可能な「受動的」安全性にある
清華大学の研究チームは、この新型原子炉の安全性を実証するため、試験を実施した。2023年8月13日と9月1日に、それぞれ1号機と2号機のモジュールを全出力で運転している状態で、外部電源を遮断するという大胆な試験となった。
テストの結果は驚くべきものだった。外部電源を失った後も、HTR-PMは35時間以内に安定した温度に達し、自然冷却に成功した。これは、非常用炉心冷却システムや電力駆動の冷却システムを一切使用せずに達成された成果である。
清華大学の研究チームは、この結果について次のように述べている:「損失冷却テストの結果は、世界初のHTR-PMデモンストラションプラントの固有の安全性を確認するものです」。
HTR-PMの各モジュールは105メガワットの電力を生成可能で、2016年から建設が進められてきた。2023年12月に商業運転を開始し、今回のテスト成功によって、その安全性と実用性が実証された形となる。
この技術は、2011年の福島第一原子力発電所事故以降、原子力業界が直面してきた安全性の課題に対する有力な解決策となる可能性がある。福島の事故では、外部電源と非常用電源の両方が失われたことで冷却システムが機能せず、メルトダウンに至った。
HTR-PMの設計は、このような事態を根本的に防ぐことができる。燃料のエネルギー密度が低いため、過剰な熱が広範囲に分散され、自然冷却が可能になるのだ。
ただし、この新技術には課題もある。既存の原子炉に後付けすることはできず、新規建設時にのみ採用可能だ。そのため、世界中でメルトダウン耐性のある原子炉を普及させるには、HTR-PM方式の原子炉を一から建設する必要がある。
一方で、この技術には大きな可能性もある。研究チームは、「気候変動緩和目標を達成するため、中国の石油化学産業に最大500°Cの高温蒸気と電力を供給する新たなプロジェクトを開始しました」と述べており、産業用途への展開も視野に入れている。
さらに、HTR-PM方式の原子炉は現地で建設する必要がなく、世界中に迅速に展開できる可能性がある。これにより、原子力エネルギーの安全性と信頼性を高めつつ、クリーンエネルギーの普及を加速させることができるかもしれない。
中国のこの成果は、原子力エネルギーの未来に新たな可能性を示すものとして、世界中の研究者や政策立案者から注目を集めるものだ。今後、さらなる実証試験や技術改良を重ねることで、より安全で効率的な原子力発電の実現に向けた大きな一歩となることが期待される。
論文
参考文献
- TechXplorer: First meltdown-proof nuclear reactor passes loss of cooling test in China
研究の要旨
核分裂エネルギーは、深層脱炭素化のコストを管理するのに役立つ低炭素資源である。 安全性は、大規模に負荷センターの近くに原子力発電所を配備する基本である。 原子炉固有の安全性は、自然の法則にのみ依存している。 世界初のペブルベッドモジュール型高温ガス炉(HTR-PM)の実証プラントが、2023年12月6日に商業運転を開始した。 HTR-PMプラントの2つの原子炉モジュールについて、それぞれ200MWtの出力で2回の安全試験が実施された。 試験中、崩壊熱を受動的に除去できるかどうかを確認するため、能動的な電力供給は完全に停止された。 原子炉出力と原子炉構造内の温度の反応から、原子炉は積極的な介入なしに自然に冷却できることが示された。 試験の結果は、商業規模の固有の安全性が存在することを初めて明らかにした。
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