PCパーツ業界の巨人Corsairが、電源ユニット(PSU)の認証方法を大きく変更する決定を下した。長年にわたり業界標準とされてきた80 PLUS認証を廃止し、より包括的なCybenetics認証へと移行することにしたとのことだ。
15年間変わらぬ80 PLUSから現代的なアプローチのCybeneticsへ
Corsairがこの戦略的転換を決定した主な理由は、Cybenetics認証がエネルギー効率と騒音レベルの両方に焦点を当てている点にある。80 PLUS認証が15年以上にわたって大きな更新を行っていないのに対し、Cybenetics認証はより現代的で詳細なアプローチを提供している。
Cybenetics認証は、従来のBronzeからTitaniumまでの効率性評価尺度に加え、新たにDiamond認証を導入している。さらに、騒音レベルについてもStandardからA++まで詳細に分類し、PSUの静音性を評価する。この二重認証システムにより、消費者はPSUの性能をより総合的に判断できるようになる。
Cybenetics認証の特徴は、複数の負荷レベルでの評価、力率、5VSB効率、待機電力などの重要な指標を含む包括的な測定にある。80 PLUSの数回の測定に対し、Cybeneticsは数千のデータポイントを生成し、より正確な結果を提供する。この詳細なアプローチにより、実際の使用シナリオをより正確に反映したPSUの性能評価が可能となる。
業界専門家からは、80 PLUS認証の簡素さが引き起こした問題点も指摘されている。多くのPSUが80 PLUS GoldやPlatinum認証に集中し、真の性能差が反映されていないという課題があった。また、製造業者が特定の負荷ポイントでの効率最大化に注力し、全体的な性能を無視する傾向も見られた。Cybenetics認証への移行は、これらの問題に対する一つの解決策となる可能性がある。
しかし、Cybenetics認証にも課題は残されている。特に、認証取得時の入力電圧に関する情報が明示されていない点は、80 PLUS認証と同様の問題を抱えている。多くの製造業者が115 VACの入力電圧で認証を取得しているが、230 VACでは同じ認証要件を満たせない可能性がある。この点については、今後の改善が期待される。
Corsairは、この移行に伴い消費者に向けた情報提供にも力を入れている。まだあまり認知度が高いとは言えないCybenetics認証について普及させるために、同社は、消費者がCybenetics認証と80 PLUS認証の違いを理解し、PSU選択時により確かな情報を基に判断できるよう支援していく方針だ。この取り組みの一環として、同社のExplorerプラットフォームで詳細な情報を公開している。
さらに、Corsairは過去数年間にリリースしたすべてのPSUに80 PLUSとCybeneticsの両方の認証を付与し、新しい基準への移行をスムーズにする努力を行っているとのことだ。将来的には、Cybenetics認証のみを使用し、PSUの性能をより正確に表現することを目指しているという。
Corsairのこの動きは、同社の市場での影響力を考えると、他のメーカーにも同様の対応を促す可能性がある。消費者のPSU品質に対する期待や基準を再形成する可能性もあり、業界全体に大きな影響を与えることが予想される。
今後、他のPSUメーカーがCorsairの動きにどのように反応するか、また消費者がこの新しい認証システムをどのように受け入れるかが注目される。
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