EU初のガリウム生産プロジェクトが進行中：資源の戦略的自立を進める

2025年1月21日

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METLEN Energy & Metals（METLEN）は、欧州連合（EU）初となるガリウム生産ラインの設立を含む、総額2億9,550万ユーロの大規模投資計画を発表した。この画期的なプロジェクトは、欧州の重要原材料における戦略的自立性を強化する取り組みの一環として位置付けられている。

新たな投資の概要

(Credit: METLEN)

METLENは、ギリシャ中部のヴィオティア県アギオス・ニコラオスにある「アルミニウム・オブ・ギリシャ」工場において、ボーキサイト、アルミナ、そしてガリウムの生産能力を大幅に拡大する。同プロジェクトは、2026年のボーキサイト生産開始を皮切りに、2027年からアルミナとガリウムの生産を段階的に開始し、2028年までに完全稼働を目指している。

年間生産目標は、ボーキサイト200万トン、アルミナ126.5万トン（現行の86.5万トンから46%増）、そしてガリウム50メートルトンとなっている。これら3種の金属はいずれも、EUの重要原材料（CRM）リストに含まれており、その総生産額は約10億ユーロと見積もられている。

中国依存からの脱却

本プロジェクトの戦略的重要性は、現在の世界的なガリウム供給構造に起因している。米国地質調査所によると、2023年の世界のガリウム生産の98%を中国が占めている状況だ。2024年7月に中国がガリウムの輸出規制を実施したことで、西側諸国の脆弱性が顕在化し、供給源の多様化が急務となっていた。

METLENのChairman兼CEOのEvangelos Mytilineos氏は、「この landmark的な産業投資の実施は、重要原材料における欧州の自給自足を強化し、ギリシャのグローバルな戦略的位置付けを高めるものである」と述べている。

ガリウムの産業的重要性

ガリウムは現代のハイテク産業において不可欠な元素として注目を集めている。この銀白色の金属は室温で液体となるユニークな特性を持ち、地殻中では32番目に豊富な元素として存在している。その産業的な応用は、主に化合物半導体の形で展開されており、特にヒ化ガリウムと窒化ガリウム（GaN）という二つの重要な化合物として広く活用されている。

半導体産業においては、ヒ化ガリウムがシリコンの有力な代替材料として重要な役割を果たしている。シリコンに類似した結晶構造を持つヒ化ガリウムは、より高速な電子移動を可能にし、高周波デバイスの性能を大幅に向上させる。この特性は、第5世代移動通信システム（5G）などの高速通信技術において特に重要性を増している。

発光デバイスの分野では、ガリウムは革新的な進歩をもたらした。特に、窒化ガリウムは青色LEDの開発を可能にした鍵となる素材である。この技術革新は、現代の高効率照明システムやディスプレイ技術の基盤となっており、エネルギー効率の向上に大きく貢献している。さらに、この技術はブルーレイディスクの読み取り装置にも応用されており、高密度データストレージの実現に不可欠な要素となっている。

電力制御デバイスの分野においても、ガリウム化合物は重要な役割を果たしている。窒化ガリウムを用いたパワー半導体は、従来のシリコンデバイスと比較して、より高い電圧での動作や、より効率的な電力変換を可能にする。この特性は、電気自動車や再生可能エネルギーシステムにおける電力制御において、特に重要性を増している。

さらに、ガリウムは先端的なセンサー技術にも応用されている。圧力センサーやタッチスイッチなどのデバイスに組み込まれ、モバイル機器やウェアラブルデバイスの機能性向上に貢献している。また、高いボイリングポイントを持つという特性を活かし、高温環境下での温度測定にも利用されている。

防衛産業においても、ガリウムは重要な役割を果たしている。レーダーシステムや通信機器に使用される高周波デバイスの製造に不可欠であり、軍事技術の発展においても戦略的に重要な材料として位置づけられている。

このように、ガリウムは単なる金属元素としての価値を超えて、現代の産業技術を支える基盤材料としての重要性を持っている。特に、デジタルトランスフォーメーションやグリーンテクノロジーの進展に伴い、その重要性は今後さらに増大していくことが予想される。EUが自給体制の確立を目指す背景には、こうした幅広い産業分野における不可欠性があり、供給の安定性確保が産業競争力の維持に直結するという認識がある。