人工知能(AI)の急速な発展が、エネルギー消費と気候変動対策の観点から新たな論争を巻き起こしているが、元Google CEOのEric Schmidt氏の最近の発言が、テクノロジー業界と環境保護主義者の間に波紋を広げている。
AIのための「無限のエネルギー需要」
Special Competitive Studies Projectが主催した「AI + Energy」サミットにおいて、Schmidt氏は、恐らく多くの人が薄々感づいてはいるだろうが、口にはしていないことを正直に述べている。「我々はいずれにせよ気候変動対策目標を達成できないだろう。なぜなら、我々はそれを実行するための組織化ができていないからだ」。
これに関し、Schmidt氏は現在の気候変動対策目標を放棄し、AI開発に全力を注ぐべきだと提案した。
この発言の背景には、AIが「エイリアンの知性」をもたらすという彼の信念がある。Schmidt氏は、この未知の知性が人類の能力を超えた新しい科学を生み出し、気候変動を含む諸問題を解決すると期待している。
「AIを制約するよりも、AIに問題を解決させる方に賭けたい」というSchmidt氏の言葉は、テクノロジーの可能性に対する彼の強い信念を表している。
そして、彼はAIの発展には「10倍、100倍、1000倍のコンピューター」が必要であり、そのエネルギー需要は「無限」だと主張しており、今後も増え続けるであろう電力需要を正当化する発言も続けている。
批判と懸念:AI開発と気候変動のジレンマ
Schmidt氏の提案は、多くの批判と懸念を呼び起こしている。特に問題視されているのは、AIの開発がすでに多大なエネルギーを消費し、温室効果ガスの排出増加につながっている点だ。
Googleの例を見ると、2019年から2023年の間に総温室効果ガス排出量が48%増加したことが報告されている。この増加の大部分は、2022年以降のデータセンターにおける処理需要の増大に起因するとされている。
さらに、英国の経済学者William Jevons氏が1865年に指摘した「Jevonsのパラドックス」の再現を懸念する声もある。このパラドックスは、技術の効率化が逆にリソースの消費を増加させる現象を指す。AIがエネルギー生産を15%以上効率化できたとしても、エネルギー価格の低下によって需要が増加し、結果的に消費量が増える可能性がある。
また、人類の未来をAIの決定に委ねることへの警告も出されている。ハリウッド映画が幾度となく描いてきたように、人類の運命を別の知性体に委ねることのリスクは、夢物語のようにも聞こえるが、無視できないだろう。
Source
- Special Competitive Studies Project: Fireside – Eric Schmidt
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