フランス原子力・代替エネルギー庁(CEA)のWESTトカマク型核融合炉が、プラズマを22分間以上維持することに成功し、新たな世界記録を樹立した。この成果は、ITERなどの次世代核融合炉開発を大きく前進させるものと期待されている。
22分間のプラズマ維持、中国の記録を大幅に更新
フランス原子力・代替エネルギー庁(CEA)は2月12日、カダラッシュ研究所のWEST(タングステン環境トカマク)炉において、プラズマを1337秒、すなわち22分17秒間維持することに成功したと発表した。これは、中国科学アカデミー・プラズマ物理研究所(ASIPP)のEAST(先進超伝導トカマク実験装置)が2025年1月に達成した1066秒の記録を25%も上回るものである。
核融合エネルギー実現への道のりにおいて、プラズマの長時間維持は重要な技術的ハードルである。CEA基礎研究部門ディレクターのAnne-Isabelle Etienvre氏は、「WESTは2MWの加熱パワー注入により、20分以上にわたる水素プラズマの維持という、新たな主要技術マイルストーンを達成しました」と述べている。
ITERへの貢献、次世代炉開発を加速
今回の実験の目的は、単にプラズマを長時間維持するだけでなく、プラズマと炉内壁の相互作用を制御し、プラズマの汚染や炉の損傷を防ぐことにあった。CEAによると、WESTで得られたデータは、現在フランス南部で建設中の国際熱核融合実験炉(ITER)など、より大型で野心的な核融合炉の開発に活用される予定である。
ITERは、核融合反応を持続させ、発電に必要な熱エネルギーを生み出すことを目指している。WESTでの成果は、ITERにおけるプラズマ制御の実現可能性を高め、核融合エネルギーの実用化に向けた重要な一歩となるといえる。
核融合エネルギーの未来と課題
核融合は、水素などの軽い原子核同士を融合させて、莫大なエネルギーを取り出す技術である。燃料となる資源が豊富で、二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギー源として期待されている。また、核分裂反応と比較して、核廃棄物の問題も少ないとされている。
しかし、核融合の実用化には、プラズマの超高温・高圧状態の維持、エネルギー収支の改善、経済性の確立など、多くの課題が残されている。CEAも「核融合技術が2050年までにカーボンニュートラル達成に大きく貢献する可能性は低い」と認めており、技術的なブレークスルーと経済的な実現可能性の両面で、今後の研究開発が不可欠である。
XenoSpectrum’s Take
今回のWESTの記録更新は、核融合研究開発が着実に進展していることを示す明るいニュースだ。特に、ITERのような大型プロジェクトへの貢献が期待される成果であり、今後の進展が注目される。
ただし、核融合エネルギーの実用化は、依然として長期的な視点が必要な挑戦的な目標である。技術的な課題に加えて、経済性や社会的な受容性など、乗り越えるべきハードルは少なくない。今回の成果を契機に、国際的な協力体制をさらに強化し、持続的な研究開発投資が不可欠となるであろう。
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