米国の核融合スタートアップ「Xcimer Energy」は、核融合発電で用いられる高エネルギーレーザーシステムを開発するために、投資家と米国エネルギー省から1億米ドル以上の資金を調達したことを発表した。
レーザー核融合のための革新的技術開発を進める
これまで多くの発電技術が開発されてきたが、究極の発電技術は核融合発電だ。これは、地球上に小型の太陽を生み出すことに等しく、そこから発生する莫大なエネルギーを利用する事ができ、原子力発電(核分裂)よりも遥かにクリーンなものとなる。
核融合発電方式で最も有望なものの一つがトカマク型だ。これはドーナツ型の磁場を使用して水素プラズマを圧縮し、太陽の中心よりも何倍も高い圧力と温度に加熱するものである。ITERという世界的な核融合実験炉の開発が進められているが、そのITERもトカマク型だ。核融合反応事態は既に何度も達成されているが、難しいのは投入したエネルギーよりも多くのエネルギーを得ることだ。だが、これは2022年12月5日、ローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)の国立点火施設(NIF)によって達成されている。ここでは、トカマクとは別の有望な方式、レーザー駆動慣性核融合が用いられた。これは、大規模なレーザーバンクを凍結された重水素と三重水素の小さなペレットに集中させるものだ。これらの結合されたビームの爆発がペレットを爆縮させ、核融合反応を引き起こし、それによって生成されたエネルギーが生成に必要なエネルギーを上回る。現在までに、NIFは燃料を着火するために供給されたレーザーエネルギーの2.5倍の核融合エネルギーを生成できる。
だが、国立点火施設の設備は実験的なものであり、実用的な核融合発電所を実現するためのものではない。
そこでXcimer Energyが登場する。2022年以来、デンバーに拠点を置くこの会社は、レーザー核融合の概念を実用的な電力源に変えるために取り組んできた。目標は、国立点火施設よりも10倍強力なレーザーエネルギーを10倍高い効率で生成し、1ジュールあたりのコストを30倍以上低減する新しいクリプトンフッ化物レーザー施設を生産することである。
1980年代にスターウォーズ計画の愛称で呼ばれることの多い米国戦略防衛構想のために最初に開発された技術を使用して、Xcimerの施設は10メガジュール以上のエネルギーを生成するレーザーシステムを使用する。これは、より大きくて作りやすく取り扱いやすい重水素/三重水素ペレットに集中的に照射され、点火時により多くのエネルギーを生成する。
エネルギーを生成しても、それを活用しなければ無意味であるため、核融合チャンバーには溶融リチウム塩が流れており、壁を中性子から保護し、メンテナンスを減少させるだけでなく、エネルギーを吸収して電力を生成するために利用される。
アイデアとしては、レーザーが50メートルの間隔を置いて配置され、2つの小さな穴を通してターゲットペレットにビームを集中させるシステムである。システムは燃料のごく少量を点火するように設計されている。ここで発生したエネルギーは、残りの燃料を点火するのに必要なエネルギーとして利用される。紙の端に点火すれば後の紙にはその炎が燃え広がるようなイメージだ。必要なのは最初の少量の入力エネルギーだけで良い、効率的で経済的な方法である。
「人類にとって核融合の利点はこれまで以上に明確で必要不可欠です。Xcimerは慣性核融合に対する画期的なアプローチを開発し、この道を進むために業界で最も優れた頭脳を集めたチームを結成しました。Xcimerがこの道をリードすることで、この変革的なエネルギー源がついに商業規模で展開されるのを世界は目にすることになると確信しています」と、とXcimerの取締役会メンバーであるMark Cupta氏は述べている。
Source
コメント