Googleは3月15日、2025年後半までに長年親しまれてきたGoogle アシスタントを生成AIチャットボットのGeminiに完全に置き換える計画を発表した。この移行は、モバイルデバイスだけでなく、タブレット、車載機器、ウェアラブル、スマートホームデバイスなど、Google アシスタント搭載の全デバイスに及ぶ大規模なものとなる。
移行の詳細:対象デバイスと時期
Googleの発表によると、「今後数ヶ月のうちに」より多くのモバイルユーザーをGoogle アシスタントからGeminiへアップグレードする取り組みが始まり、2025年後半には従来のGoogle アシスタントがほとんどのモバイルデバイスでアクセスできなくなる予定だ。また、アプリストアからの新規ダウンロードも不可能になる。
ただし、Android 9以前を実行し、RAMが2GB未満の古いデバイスについては例外が設けられており、こうした端末では引き続きGoogle アシスタントを使用できるという。これは、リソースの制限からGeminiを実行できない端末への配慮と見られる。
移行はモバイルデバイスにとどまらず、Googleはタブレット、車載システム、ヘッドフォン、腕時計などの接続デバイスもGeminiにアップグレードする計画だ。さらに、スピーカー、ディスプレイ、テレビなどのホームデバイスにも「Geminiを搭載した新しいエクスペリエンス」が提供される予定で、詳細は「今後数ヶ月以内」に共有されるとしている。
現時点では、移行の詳細なスケジュールは明らかにされていないが、5月に開催予定のGoogle I/Oカンファレンスで詳細が発表される可能性がありそうだ。
Geminiの現状と今後の展開
Geminiは2024年2月の発表以来、急速に進化している。発表当初は多くの音声アシスタント機能が不足していたものの、ロック画面でのGeminiへのアクセスや電話機能の制御など、機能の拡充が進められてきた。
Googleによると、すでに「何百万人もの人々」がGoogle アシスタントからGeminiに移行しており、新しいAI機能が日常生活でどれほど役立っているかのフィードバックを得ているという。また、Geminiアプリは現在40言語以上、200ヶ国以上で利用可能になっている。
Googleは特にGoogle アシスタントに頼ってきたユーザーのために、「日常的なGeminiエクスペリエンスの質を向上させることに引き続き注力している」としており、音楽の再生やタイマーの設定、ロック画面からのアクションなど、最も要望の多い機能をサポートするようアプリを更新してきた。
Geminiの機能はGoogle アシスタントを超えるものとなっており、「Gemini Liveを使用した自由な多モーダル会話」や「Geminiをパーソナルリサーチアシスタントに変えるDeep Research」など、AIならではの新機能も提供されている。今月中には、Astra搭載のビデオおよび画面共有機能が追加される予定だ。
移行の背景と影響
Googleは2016年にGoogle アシスタントを発表し、「自然言語処理と音声認識技術によって、より自然な方法でGoogleからの支援を得る方法を実現した」と当時を振り返っている。しかし、「ほぼ10年後の今、私たちは別のプラットフォームシフトの真っ只中にいる—今回は、生成AIが技術との対話方法を変革している」と述べ、AIアシスタントの新時代への移行を示唆している。
Googleは「アシスタントはパーソナルで、周囲の世界を認識し、すでに使用しているアプリやサービスと対話できるべきだ」と述べ、「より生産的で、より創造的で、少し好奇心を高めるものであるべき」というビジョンを示している。
一方で、この移行に関する懸念もある。生成AI特有のハルシネーションによる誤回答や、Google アシスタントではうまく機能するタイマーやアラームの設定などの基本機能が、Geminiではまだ完全に動作していないケースもあるためだ。
とは言え、Google アシスタントもその公開以来、多くの問題を抱えており、必ずしもユーザーから高い評価を得てきたわけではない。この移行が成功するかどうかは、Geminiが基本的な音声コマンド機能を確実に実行できるようになると同時に、AIの強みを活かした新たな価値を提供できるかにかかっている。
この大規模な移行は、Googleが生成AIを中核とした戦略に本格的にシフトしていることを示すものであり、今後のAIアシスタント市場の競争にも大きな影響を与えそうだ。AppleのSiriやAmazonのAlexaなど、競合サービスの動向も注目される。
Source