Googleの最新フラッグシップスマートフォン、Pixel 9シリーズが発表された。新型のTensor G4は、前モデルまで付いて回った“熱くなる”という悪評を払拭し、温度管理の面で大きな進歩を遂げたものの、ゲーミング性能やバッテリー持続時間では競合他社に遅れを取っている可能性が指摘されており、ユーザー体験の向上と性能のバランスをどう取るかという課題の難しさを改めて考えさせる物だ。
温度管理の大幅な進展とパフォーマンスのジレンマ
Pixel 9 Pro XLのゲーミング性能テストでは、興味深い結果が明らかになった。人気ゲーム『原神』を実行した際、デバイスの温度は驚くべきことに摂氏37度程度に抑えられ、競合機種と比較して最も低い温度を記録した。この優れた温度管理は、これまでの評判を覆し、ユーザーの快適性を考慮したGoogleのアプローチを示すものと言える。
しかし、この低い温度の維持には弊害もあった。ゲームプレイ時、フレームレートは期待を大きく下回る結果となったのだ。Pixel 9 Pro XLは720p解像度で平均39.2FPSを記録したが、これはSamsung Galaxy S24 UltraのSnapdragon 8 Gen 3チップが記録した51.4FPSに比べて24%遅く、iPhone 15 Pro MaxのA17 Proチップの59.2FPSと比較すると実に34%も遅い結果となっている。さらに驚くべきことに、2年前のモデルであるPixel 7 ProのTensor G2チップを搭載したモデルの45.3FPSと比較しても、Pixel 9 Pro XLは14%遅い結果となった。
この結果は、GoogleがTensor G4チップの性能を意図的に抑制している可能性を強く示唆している。過熱を防ぐため、電力制限を設けている可能性が高いのだ。実際、Googleの幹部が以前、Tensor G4はベンチマーク記録を破るためではなく、ユーザー体験を向上させるために設計されたと述べていたことからも、あり得ない話ではない。
バッテリー持続時間のテストでも、Pixel 9シリーズは温度管理面で優れた結果を示した。Pixel 9とPixel 9 Pro XLは、テスト中最も低い摂氏40.9度の温度を記録。これは、Samsung Galaxy S24 Ultraが摂氏50.4度まで上昇したのとは対照的だ。特筆すべきは、ベースモデルのPixel 9がベイパーチャンバーを搭載していないにもかかわらず、この優れた温度管理を実現したことだ。
しかし、この優れた温度管理にもかかわらず、バッテリー持続時間では競合他社に後れを取っている。Pixel 9とPixel 9 Pro XLは共に10時間25分の持続時間を記録。これは、iPhone 15 Pro Maxの11時間44分には及ばなかった。Pixel 8 Proと比較すると、バッテリー容量の増加により持続時間は向上したものの、競合他社との差は依然として存在する。
これらの結果は、Googleが温度管理を最優先し、その代償としてパフォーマンスとバッテリー持続時間を犠牲にしている可能性を示唆している。Googleのアプローチは、長期的な使用における快適性や安定性を重視したものと考えられるが、ハイエンド端末としての性能面での競争力には課題を残す物だ。
今後、『原神』などのゲームアプリがPixel 9シリーズに最適化されることで、パフォーマンスが向上する可能性や、OSのソフトウェアアップデートによる改善も期待される。しかし、現時点ではPixel 9シリーズのゲーミング性能とバッテリー持続時間は競合他社に比べると劣っていると言わざるを得ないだろう。
Googleの戦略は、瞬間的な高性能よりも、持続可能で安定したパフォーマンスを重視しているように見える。このアプローチは、一般的なユーザーには歓迎されるかもしれないが、ゲーミングや高負荷タスクを重視するユーザーにとっては物足りない物だ。
Googleが今後どのようにして高性能と安定性、快適性のバランスを調整し、競合他社との差を埋めていくのか、自社開発となるTensor G5を搭載するであろうPixel 10シリーズでの進化に期待したい所だ。
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