日本の公正取引委員会が、Googleに対して初となる排除措置命令を出す方針を固めた。これは同社の検索サービスとアプリ配置に関する取引慣行が独占禁止法に違反すると認定されたことを受けたものである。
公正取引委員会の調査で明らかになった違法行為
公正取引委員会の1年2カ月に及ぶ調査により、Googleがスマートフォンメーカーに対して、自社のアプリストアの搭載許可と引き換えに、Google検索アプリやWebブラウザをホーム画面の目立つ位置に配置することを求めていた実態が明らかになった。公正取引委員会はこの慣行が他の検索事業者との公正な競争を不当に阻害したと判断している。
この判断に至るまでには、2023年10月の調査開始時に当時の田辺治審査局長が「有力な事業者が市場支配力を固定化する仕組みを作ると、イノベーションが起こりづらくなり、消費者にとっても不利益となりうる」と指摘していた背景がある。
Googleの対応と確約手続きの拒否
調査開始から約1年が経過した2024年後半、Googleは公正取引委員会との協調路線を模索し、独占禁止法上の「確約手続き」の適用を水面下で打診していたことが関係者の証言で明らかになった。確約手続きは2018年に導入された制度で、調査対象となっている企業が自主的な改善計画を提示し、それが認められれば独占禁止法違反の認定を受けることなく調査を終了できる仕組みである。
この手続きは企業側にとって大きなメリットがある。違反認定を避けることで株主からの損害賠償請求リスクを軽減でき、企業イメージへの悪影響も最小限に抑えることができる。一方、公正取引委員会にとっても、競争環境の早期回復が見込め、訴訟リスクを回避しつつ、人的リソースを他の案件に振り向けられるという利点がある。実際、2024年4月にGoogleが広告制限問題で受けた行政処分では、この確約手続きが適用され、円満な解決に至っている。
しかし今回、公正取引委員会は異なる判断を下した。その背景には複数の要因がある。まず、Googleからの提案のタイミングが「遅すぎた」という認識が公正取引委員会内で強かった。調査開始から1年以上が経過し、競争環境の「早期の是正」という確約手続きの本来の趣旨から外れていると判断された。さらに重要な点として、公正取引委員会が既に独占禁止法違反の心証を固めつつあった段階でのGoogleの提案内容が、競争環境の回復という観点から見て不十分と評価されたことが挙げられる。
この動きは、世界的なGoogleへの規制強化の流れと軌を一にしている。米国司法省は先月、Googleに対してChromeブラウザの売却と5年間のブラウザ市場への再参入禁止を求める主張を展開。Chromeは世界で最も使用されているウェブブラウザであり、ユーザー情報の収集を通じて同社の広告ビジネスを支える重要な柱となっている。
Xenospectrum’s Take
今回の公正取引委員会の断固たる姿勢は、デジタルプラットフォーム規制における日本の転換点となる可能性が高い。特筆すべきは、確約手続きという「和解」の道を選ばず、明確な違反認定に踏み切ったことだ。これはデジタル市場における競争環境の維持という観点から、極めて重要な一手と言える。
しかし、現実的な影響については慎重な見方も必要だ。Googleは米国でも提案している通り、事業構造の本質的な変更を伴わない対応策を提示してくる可能性が高い。真の競争環境の回復には、規制当局による継続的な監視と、場合によってはより踏み込んだ措置が必要となるだろう。
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