HPは2025年4月、これまで組み立て済みPCとノートPCが中心だったゲーミングブランド「Omen」で、初めて自作PC向けのコンポーネント市場に参入することを発表した。冷却システムや電源ユニットを含む新製品ラインナップを「近日発売」としており、Omen以外のPCとの互換性も確保している。
製品ラインナップと技術的特徴
HPが今回発表したOmenブランドのコンポーネントは、自作PCユーザー向けの冷却システムと電源ユニットが中心となっている。具体的な製品ラインナップには、単体の120mmRGBファン、120mmモジュラーRGBファン3個パック、1000Wモジュラー電源ユニット、240mm LCD液冷システム、および360mm aRGB液冷システムが含まれる。
ファンは環状(リング状)デザインを採用しており、最大74 CFMの高い気流性能と向上した静圧により振動を低減している。各ファンには10個のaRGB LEDを搭載し、HPのOmen Gaming Hub(OGH)ソフトウェアを通じて1,620万色を使ったカスタマイズが可能だ。これらのファンはHPのデイジーチェーンシステムに対応しており、最大10個のファンを直列接続できるほか、Omen Modular Hubを使用することで最大16個のファンを1つのハブに接続できる。



液冷システムは、Asetek社の第7世代ポンプ技術を採用している。240mmモデルには2.1インチのIPS LCDディスプレイが内蔵されており、360mmモデルはアドレス可能なRGB(aRGB)照明効果を特徴としている。両モデルともOGHソフトウェアを通じて照明効果のカスタマイズが可能だ。

電源ユニットは、1000W出力のATX 3.1規格に準拠した「OMEN 1,000W PSU」で、Cybernetics PlatinumおよびPlus Gold認証を取得している。フルモジュラー設計で、最新のグラフィックカード向けに12V-2×6および12VHPWR接続に対応し、最大600Wの電力を供給できる。また、低負荷時にファンを停止させるZero RPMモードを搭載し、静音性も確保している。


互換性と接続オプション
HPは、新しいOmenコンポーネントがOmenブランド以外のデスクトップPCシステムとも互換性を持つことを明確にしている。これにより、自作PCユーザーは自分の好みに応じてパーツを組み合わせる柔軟性を得ることができる。
ファンと液冷システムはOmenのデイジーチェーンシステムに対応しており、複数のコンポーネントを簡単に接続して制御できる。すべてのOmenコンポーネントは標準的なPC規格に準拠しており、多くの一般的なマザーボードやケースと互換性がある。これにより、すでに自作PCを所有しているユーザーも、システム全体を置き換えることなくOmenコンポーネントを追加できる。


市場戦略と業界への影響
HPのOmenブランドによる自作PCコンポーネント市場への参入は、同社のゲーミング戦略の重要な転換点となる。これまでHPは組み立て済みのOmenデスクトップPCとゲーミングノートPCに焦点を当ててきたが、今回の発表により自作PC市場という新たなセグメントにアプローチする姿勢を示した。
自作PCコンポーネント市場は、ASUS、MSI、GIGABYTEなど多くの専門メーカーが競合する激しい市場だ。HPのような大手メーカーの参入は、市場に新たな競争をもたらし、消費者にとって選択肢の拡大につながる可能性がある。
特に注目すべきは、HPがコンポーネントの互換性を重視している点だ。これはOmen製品を既存のPC環境に統合したいユーザーにとって大きなメリットとなる。
発売時期と価格情報
HPは新しいOmenコンポーネントをすでに同社のWebサイトに掲載しているが、具体的な発売日や価格については「近日発売(coming soon)」と表示するのみで、詳細は明らかにしていない。
業界の慣例から考えると、こうした「近日発売」の表示は通常、数週間から数ヶ月以内の発売を示唆している。HPは今後の発表で、各製品の詳細な仕様、価格、および正確な発売日を明らかにするものと予想される。
自作PC向けのハイエンドコンポーネント市場では、品質と性能に見合った価格設定が重要となる。HPの新しいOmenコンポーネントが、既存の競合製品に対してどのような価格ポジションを取るかは、市場での成功を左右する重要な要素となるだろう。
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