PlayStation 5 Pro(PS5 Pro)が発表されて以来、その性能と価格設定について様々な議論が巻き起こっている。特に注目を集めているのが、同等の性能を持つPCを自作した場合のコスト比較だ。12万円もするならばゲーミングPCを構築した方が安いのではとの意見もSNS上では散見されるが、技術分析で定評のあるDigital Foundryの Richard Leadbetter氏が、IGNのインタビューに応じ、興味深い見解を示している。
PS5 Pro相当のPCは「かなり高価」に
Leadbetter氏は、PS5 Proと同等の性能を持つPCを構築しようとすると、「おそらくかなり高価になる」と指摘している。その理由として、必要なGPUのスペックと全体的なシステム構成を挙げている。
「GPUに関しては、すべての異なるコンポーネントの全体像を考慮すると、強化されたレイトレーシング(現時点でAMD GPUにはない)、機械学習ブロック(AMD GPUにはない)など、本質的にはNVIDIAスタイルの機能セットがAMDによって作られたようなものです」と Leadbetter 氏は説明する。
具体的なGPUの比較として、Leadbetter 氏はNVIDIA GeForce RTX 4070を挙げている。「RTX 4060はベースのPlayStation 5にかなり近い(機械学習とレイトレーシングを除外した場合)ので、4070が比較対象となるでしょう。昨日Amazonで確認したところ、最も安いものでも540ドルでした」と述べている。実際に日本市場でも、RTX 4070は安い物でも9万円程度となっている。
さらに、「それ以外にも、CPU、マザーボード、メモリ、電源、ケース、2TB SSDが必要になるので、コストはさらに上がっていきます」とLeadbetter氏は指摘する。
このような分析から、PS5 Pro相当のPCを構築するには、119,800円のPS5 Proの価格を大きく上回る可能性が高いことが分かるだろう。だが、Leadbetter氏は、PCにはオンラインプレイやクラウドセーブのための年間サブスクリプション料金がないことも考慮すべきだと付け加えている。
高価なPS5 Proの位置づけは
Leadbetter 氏は、PS5 Proのターゲットユーザーについても興味深い見解を示している。「PS5 Proは新規ユーザー向けではないと思います。すでにPlayStation 5を持っていて、より良いPlayStation 5を手に入れる余裕のある人向けだと考えています」と述べている。
これらのユーザーは、すでにPS4やPS5のタイトルのライブラリを持っているため、PCエコシステムに移行するのは大きな障壁になるとLeadbetter氏は指摘する。「PlayStationエコシステムからPCエコシステムに移行するには、これらのタイトルを置いていかなければなりません。10年かけて蓄積してきた可能性のあるライブラリ全体を置いていくことになります」
PS5 Proの119,800円(米国では699.99ドル)という価格設定については、多くのユーザーから「高すぎる」という声が上がっている。IGNの投票では、74%のユーザーがこの価格を「高すぎる」と評価している。Leadbetter 氏も、この価格設定が販売台数を制限する可能性があることを認めている。
しかし、同時に「最高の体験を得るためならどんな金額でも払う」コアユーザー層が常に存在することも指摘している。PS5 Proはそういったユーザーをターゲットにしているのではないかと Leadbetter氏は分析している。
さらに、この高価格戦略がSonyの実験的な試みである可能性も示唆している。「標準モデルは引き続き多少補助金を出すが、PS5 Proはコストで販売するか、あるいは実際にいくらかの利益を出そうとしているのではないか」と Leadbetter氏は推測している。
この価格設定は、次世代コンソールの価格にも影響を与える可能性がある。Leadbetter氏は「次世代が来たときに、そのコンソールは700ドルになるのでしょうか?確かにそうではないでしょう」と述べ、将来的にコンソールの価格がさらに上昇する可能性を示唆している。
Xenospectrum’s Take
PS5 Proの発表は、ゲーム業界に新たな議論を巻き起こしている。高性能と高価格のバランスは、コンソールゲーム市場の今後の方向性を占う重要な指標となるだろう。
Digital FoundryのLeadbetter氏の分析は、PS5 Proが単なる性能向上だけでなく、ゲーム体験の質的な変革を目指していることを示唆している。特に、PSRRやレイトレーシング性能の向上は、次世代ゲームの表現力を大きく引き上げる可能性を秘めている。
一方で、119,800円という価格設定は確かに高いと言わざるを得ない。これは、ゲーム機器の高性能化と製造コストの上昇が、消費者価格に直接反映された結果とも言える。この傾向が続けば、次世代コンソールの価格はさらに上昇し、ゲーム機がより「プレミアム」な製品へと変貌を遂げる可能性もある。
しかし、そのような状況下でも、PCとコンソールの棲み分けは続くだろう。コンソールの「プラグアンドプレイ」の利便性と、独自のエコシステムの魅力は依然として強力だ。Sony自身も、PCと比較したPS5 Proの使いやすさの利点を指摘している。また、PS5 Proのような高性能機が登場することで、ベーシックモデルの相対的な「お買い得感」が増す可能性もある。
今後は、ゲームの開発コストと販売価格、ハードウェアの性能と価格のバランスが、業界全体の大きな課題となるだろう。消費者にとっては、自身のニーズと予算に合わせて、より慎重に機器を選択する時代が来たと言えるかもしれない。PS5 Proの成功如何は、ゲーム業界の未来を占う重要な指標となるはずだ。
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