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掃除ロボット「ルンバ」開発元iRobotが存続危機を表明:財務悪化で12カ月以内の倒産リスク

2025年3月13日

ロボット掃除機Roomba(ルンバ)で知られるiRobotが今後12カ月間の事業継続に「重大な疑念」があると投資家に表明した。Amazon買収計画の破綻後、収益が急落し債務負担が増大する中、同社は新製品発表と並行して事業の戦略的見直しを開始。市場からの反応は厳しく、株価は発表後に約40%下落した。

「継続企業」としての存続に疑念

iRobotは2025年3月12日の年次報告書で、「継続企業(going concern)」としての存続に「重大な疑念(substantial doubt)」があると明らかにした。この発表を受け、同社の株価は翌日午前には約40%下落し、4ドル前後まで急落した。

財務状況は深刻で、2024年第4四半期(2024年10月-12月)の収益は前年同期比47%減の1億7,200万ドルと急落。地域別では米国で47%、日本で34%、欧州・中東・アフリカ地域で44%の大幅な減少となった。年間を通しても、2024年度の収益は前年比23%減の6億8,180万ドルにとどまり、純損失は1億4,551万ドルを記録した。

iRobotのGary Cohen CEOは「2024年は変革の年だった」としながらも、「収益成長の再開は2025年からの見通し」と述べている。2024年度末時点の現金・現金同等物は1億3,430万ドルに留まっており、資金繰りの厳しさを物語っている。

Amazon買収破綻が引き金に

iRobotの経営危機は、2024年1月に破綻したAmazonによる買収計画と直結している。

2022年、Amazonは17億ドルでiRobotを買収する計画を発表した。当時、すでに中国メーカーの台頭による競争激化で業績が低迷していたiRobotにとって、この買収は救済策として期待されていた。

しかし欧州の規制当局は、Amazonがオンラインストアの影響力を利用して競合するロボット掃除機メーカーを不利に扱う可能性を懸念。加えて、Amazonが消費者の家の間取り図データにアクセスできることによるプライバシー問題も指摘された。米連邦取引委員会(FTC)も同様の懸念を表明し、結果として買収計画は頓挫した。

ロボティクス分野のロビーグループであるComputer & Communications Industry Associationは当時、「ダイナミックな中国メーカーに追い越された部門で、苦戦する米国の掃除機メーカーを米国の小売業者が買収することに、競争へのリスクはない」と抗議したが、買収は破綻に追い込まれた。

買収失敗直後、iRobotは従業員の30%以上を解雇。共同創業者のColin AngleがCEOを辞任し、空気清浄機や芝刈り機など非中核事業からの撤退を発表した。AmazonのCEO Andy Jassy氏は「買収を断念した結果、iRobotは従業員の3分の1を解雇し、株価は完全に暴落した。そして今、彼らが継続企業として存続できるかという本当の疑問がある」と規制当局の判断を批判している。

大規模リストラと新製品投入による再建策

存続の危機に直面したiRobotは、大胆なリストラと新製品戦略で反撃を試みている。

2023年末以降、同社は従業員の51%を削減し人員を541人まで縮小。販売・マーケティング費用の集約・統合、R&Dとサプライチェーンモデルの変革、委託製造パートナーシップの活用により、大幅なコスト削減を実現した。在庫も2023年末の1億5,250万ドルから2024年末には7,600万ドルへと半減している。

並行して、iRobotは3月11日に「同社史上最大の製品発表」として8つの新しいRoombaモデルを発表した。これらの新モデルは:

  • デザインを大幅に刷新
  • 競合他社ではすでに採用されていたlidarナビゲーション機能を初めて搭載
  • 一部モデルにAI技術を導入
  • モップ機能付きモデルには二重洗浄パッドとカーペット検知機能を搭載

また、わかりやすいモデル名体系を導入し、シンプルなモデルは「105シリーズ」、最も機能が充実したモデルは「505シリーズ」として整理。価格帯も300ドルから1,000ドルと、Ecovacs、Roborockなど競合他社に近い価格設定となっている。

Cohen CEOは「この新製品は、我々が創造したカテゴリーのリーダーとしてiRobotの位置付けを強化するものだ」と自信を示し、「既存製品より利益率が向上し、2025年には前年比での収益成長をサポートするはず」と述べている。

債務負担と今後の不透明な見通し

財務状況改善のため、iRobotの取締役会は「正式な戦略的見直し(formal strategic review)」を開始し、債務のリファイナンスや潜在的な売却を含む幅広い選択肢を検討中。金融アドバイザーとしてCanaccord GenuityとBofA Securitiesを起用した。

特に深刻なのが2023年7月にCarlyle Groupから借り入れた2億ドルのローン問題だ。財務義務の一時的免除を受けるため、iRobotは360万ドルの手数料を支払う必要があり、The Vergeが指摘するように、これが大きな重荷になっている。同社は「予見可能な将来にわたって損失を被り続けると予想」しており、債務返済の見通しが立たない状況だ。

しかし、iRobot自身が認めているように、「新製品発売の成功は消費者需要、競争、マクロ経済条件、関税政策などの要因により保証されない」。これらの不確実性を考慮すると、「連結財務諸表発行日から少なくとも12カ月間、継続企業として存続する能力に重大な疑念がある」としている。

特に脅威となっているのが中国メーカーとの競争激化だ。Anker、Ecovacs、Roborockなどの中国ブランドは急速に成長し、iRobotの市場シェアを侵食している。CNBCは「最も急成長しているロボット掃除機事業の多くは中国に拠点を置いている」と指摘している。

厳しい状況を象徴するように、iRobotは予定していた2024年度決算説明会を中止し、2025年の業績見通しも提供しないことを発表した。

ロボット掃除機市場の先駆者であるiRobotが今後も存続できるか、新製品戦略と事業再編の成否がその運命を左右することになる。


Sources

Meta Description

Roomba開発のiRobotが今後12カ月間の存続に重大な疑念を表明。Amazon買収失敗後の収益47%減少と債務問題に直面し、大規模リストラと新製品投入で再建を目指す状況を解説。

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