Microsoftが革新的な拡張現実(AR)デバイスとして注目を集めてきたHoloLens 2の製造を終了することを発表した。この決定は、AR/MR(複合現実)市場における同社の戦略的方向性の大きな転換を示唆している。
HoloLens 2の終焉:市場動向と競合状況
HoloLens 2は2019年初頭に発表され、同年後半から出荷が開始された。当初3,500ドルという高価格設定にもかかわらず、企業向けAR市場で主導的な地位を築いていた。しかし、発売から約5年が経過し、競合他社の台頭や市場の変化により、その優位性が徐々に失われつつあった。
Microsoftの広報担当者は、「Microsoftは今後、HoloLens 2の製造を行わず、顧客やパートナーに対して最後の購入機会を通知しました」と述べている。同社はHoloLens 2のソフトウェアサポートを2027年12月31日まで継続するとしているが、それ以降のアップデートは行わない方針だ。
この決定は、AR/MR市場の競争激化を反映している。Magic Leapが2019年末に企業向け市場にシフトし、2022年にはより広い視野角と強力な処理能力を持つMagic Leap 2を発表。さらに、AppleやMetaといった大手テクノロジー企業がパススルー型ヘッドセットを投入し、市場競争が一層激しさを増している。
HoloLens 2の製造中止に伴い、Microsoftは企業向けAR/MRハードウェア市場から事実上撤退することになる。しかし、同社は複合現実(MR)技術への投資を完全に放棄するわけではない。Microsoftの広報担当者は、「私たちは引き続き、ファーストパーティのソフトウェアソリューションとサービスを通じて、より広範なモバイルフォンおよび混合現実ハードウェアエコシステムとのパートナーシップを活用しながら、複合現実の機会に投資していきます」と述べている。
この新戦略の一環として、MicrosoftはMetaとのパートナーシップを強化している。既にXbox Cloud GamingやOfficeウェブアプリケーションがQuest headsetのHorizon OSで利用可能となっており、今後はWindows 11ラップトップの自動拡張機能など、さらなる統合が計画されている。
一方で、MicrosoftはHoloLens技術を活用した米軍向けIVAS(統合視覚強化システム)プログラムには引き続きコミットメントを示している。2025年初頭には中隊レベルでの運用テストが計画されており、同年後半には本格的な生産に移行するかどうかの判断が下される予定だ。
AR/MR市場は依然として成長と変化を続けており、Metaが最近発表した次世代ARデバイス「Orion」のプロトタイプは、より広い視野角をメガネ型の形状に収めるなど、技術の進化を示している。
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