Microsoftが検索エンジンBingで新たな物議を醸す施策を展開している。ログインしていないユーザーが「Google」を検索すると、GoogleのUI(ユーザーインターフェース)を模倣したページが表示される仕組みを実装。この動きに対し、Google幹部が強く非難する事態となっている。
巧妙な偽装手法の実態
MicrosoftがBingに実装した新たなUI操作は、単なる見た目の模倣を超えた、緻密に計算された仕組みとなっている。非ログインユーザーが「Google」というキーワードで検索した際に限り、通常のBing検索結果とは全く異なる特殊な表示制御が行われる。
画面の中央には、Googleの象徴的な要素であるGoogle Doodleを想起させるイメージが配置され、その直下にはGoogleと同じスタイルの検索バーが据えられている。さらに検索バー下部には、Googleの公式ページと同様の小さなテキストも添えられており、一般ユーザーがGoogleのホームページと誤認する可能性が極めて高い設計となっている。
特に巧妙なのは、ページ読み込み後に自動的に実行されるスクロール制御だ。通常はページ上部に表示されるBing独自の検索バーやアイコン類が、自動的に画面外へと移動する。この動きにより、ユーザーの目に入る範囲からBingの特徴的な要素が除外され、Google風のインターフェースだけが際立つ仕組みとなっている。
また興味深いのは、この特殊な表示がMicrosoftアカウントでログインしていないユーザーにのみ提供される点である。これは新規PCのセットアップ時やMicrosoft Edgeブラウザの初期使用時など、ユーザーがGoogleへの移行を検討する可能性が高いタイミングを狙った戦略とみられる。実際のGoogle検索結果へのリンクは画面下部に残されているものの、多くのユーザーは中央に配置された偽装された検索バーを使用してしまう可能性が高い。
この仕組みはEdge、Chrome、Firefoxなど、主要なブラウザ全てで確認されている。ただし「Google」以外の検索クエリでは通常のBing検索結果が表示され、他の検索エンジンの検索時にも同様の偽装は行われていない。このことから、この機能が極めて限定的かつ戦略的に実装されたものであることが明らかとなっている。
市場シェアを巡る攻防戦の深層
この施策の背景には、検索エンジン市場における厳しい現実がある。StatCounterの最新レポートによると、Googleの検索シェアは89.74%に達する一方、Bingは3.97%に留まっている。
さらにMicrosoft CEO のSatya Nadella氏は「GoogleはMicrosoft全体よりもWindowsで多くの収益を上げている」と述べており、検索エンジン市場での劣勢を挽回したい意向が強く働いているとみられる。
業界からの反応と批判
この動きに対し、GoogleのChrome部門を率いるParisa Tabrizは自身のXへの投稿で「模倣は最大の賛辞だが、MicrosoftによるGoogleホームページの偽装は、ユーザーを混乱させ選択を制限するための長年の策略の一つだ」と強く批判。「新年早々、新たな低みに達した」と非難している。
興味深いことに、この批判はGoogleが米国と欧州連合で市場支配的地位の濫用について調査を受けている最中に行われている。両社とも、それぞれの方法で市場での優位性を確保しようと試みている実態が浮き彫りとなった。
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