Microsoftは、クラウドストレージサービス「OneDrive」の大規模なアップデートを発表した。この更新により、AIを活用した機能、改善されたコラボレーションツール、そして新しいモバイルアプリなど、多数の新機能が追加される。
OneDriveの進化:AIとコラボレーションの新時代
OneDriveは、世界中の企業や個人ユーザーに広く利用されているクラウドストレージサービスである。Microsoftによれば、Fortune 500企業の94%がOneDriveを採用しているという。今回のアップデートは、ビジネスユーザーと個人ユーザーの両方にとって、ファイル管理や共同作業の方法を大きく変える可能性を秘めている。
最も注目すべき新機能の一つが、「Copilot Agent」である。これは、OneDrive内にカスタマイズ可能なAIアシスタントを作成できる機能だ。ユーザーは、特定のプロジェクトや業務に関連するファイルや情報をCopilot Agentsに取り込ませることで、そのプロジェクトに特化したAIアシスタントを作り出すことができる。
Copilot Agentには、様々な反復タスクを自動化することを指示したり、情報を把握する手助けを依頼できる。また、作成したCopilot Agentはチームと共有することも可能で、Microsoft Teams、 OneDrive、SharePointなど、さまざまなプラットフォームで動作し関係者全員にとって貴重なリソースとなり得るだろう。
また、OneDriveのWebバージョンではデザインが刷新され、検索体験そのものが生まれ変わっている。
OneDriveの製品担当バイスプレジデントであるJason Moore氏は、新しい検索機能について次のように述べている。「我々の改善された検索体験はゲームチェンジャーです。新しいフィルターコントロールとより詳細な結果により、OneDrive内、共有ライブラリ内、あるいは同僚のフォルダ内のファイルやフォルダを、より速く、より簡単に見つけることができます」。
この新しい検索機能は、OneDriveの起動時間の短縮も含めた大幅なパフォーマンス向上を実現している。Microsoftによれば、この検索アップデートは現在展開中で、2024年末までにはOneDriveの商用顧客全てが利用可能になるという。
さらに、ファイル共有の機能も強化された。ユーザーはリアルタイムでドキュメント上で作業している人を確認できるようになり、共有リンクに有効期限を設定することで、セキュリティとコントロールを強化することができる。
これらの機能強化により、OneDriveはただのクラウドストレージサービスから、AIとコラボレーションを融合させた次世代のワークスペースへと進化を遂げようとしている。
新しいモバイルアプリと写真管理機能
今回OneDriveの刷新は、デスクトップだけでなくモバイルアプリでも実施されている。今回Microsoftは、写真を中心に据えた新しいOneDriveモバイルアプリを発表した。この新アプリは、ユーザーの思い出を鮮やかに呼び起こすことを目的としている。
新しいモバイルアプリの特徴は以下の通りだ:
- 写真中心のデザイン:アルバム、人物、お気に入りの写真に簡単にアクセスできるよう設計されている。
- 強化された写真検索機能:AI駆動の自然言語検索が導入され、「ソフィアと犬がボートに乗っている」といった自然な言葉で写真を検索できるようになった。
- 思い出の強化:特別な旅行や個人的なマイルストーンなど、より多くの種類の思い出をサーフェスするようになった。
- シンプルな写真共有:OneDriveアカウントを持っていない人とも、フルサイズの写真を簡単に共有できるようになった。
さらに、他のクラウドサービスからの写真インポート機能も追加された。ユーザーはGoogle Drive、Google Photos、Dropboxから写真、ビデオ、ドキュメントを簡単にインポートできるようになる。
これらの新機能は、Android用アプリでは本日から順次展開が開始され、iOS用アプリは11月にアップデートが予定されている。なお、自然言語検索機能は、まずMicrosoft 365の加入者に提供され、2025年の夏までには全ユーザーに展開される予定だ。
Microsoft 365の個人および家族向けプランのユーザーにとっては、さらに朗報がある。年内に、現在の2TBを超える5TBと10TBの新しいストレージティアが追加される予定だ。これにより、より多くの思い出や重要なファイルを安全に保存できるようになる。
Windowsファイルエクスプローラーの改善とドキュメントライブラリの更新
デスクトップ版OneDriveでもWindowsのファイルエクスプローラーでの改善が行われており、OneDrive内のカラフルなフォルダがサポートされるようになった。これは、Web版OneDriveですでに設定していたカラフルなフォルダが、ファイルエクスプローラーにも反映されるというものだ。
この機能により、ユーザーは視覚的にファイルを整理しやすくなり、作業効率の向上が期待できる。例えば、プロジェクトごとに異なる色のフォルダを設定することで、膨大なファイル群の中から必要なものを素早く見つけ出すことができるようになる。
さらに、Microsoftは2025年半ばまでに、OneDriveのドキュメントライブラリ体験に「大幅な改善」を加えると約束している。OneDriveの製品担当バイスプレジデントであるJason Moore氏は次のように述べている。
「我々は全体的なパフォーマンスと信頼性を向上させ、ナビゲーションをより簡単かつ高速にし、カスタムビューの作成と切り替え、大規模なデータセットのフィルタリングをより容易にします」。
これらの改善により、OneDriveはより直感的で使いやすいものとなり、特に大量のファイルを扱う企業ユーザーにとっては、日々の業務の効率が大幅に向上することが期待される。
また、商用顧客向けには本日からOneDrive内でのCopilotの使用が可能になった。これにより、ファイルの要約、複数ファイルの比較、特定のファイルに関する質問への回答など、AIを活用した様々なタスクをOneDrive上で直接実行できるようになる。
セキュリティと管理機能の強化
ユーザビリティの向上だけでなく、セキュリティと管理機能の強化も行われている。特に、IT専門家や企業のデータ管理者にとって重要な機能が多数追加された。
- サイトポリシー比較レポート: AIを活用したこの新機能により、管理者は数回のクリックで類似のサイトを特定し、不足しているポリシーを確認できるようになる。これにより、組織全体のコンプライアンス維持が容易になる。この機能は2024年末にパブリックプレビューが開始される予定だ。
- Microsoft Graph Data Connect(MGDC)との統合: OneDriveの同期健全性レポートがMGDCと統合され、管理者はデータをPower BIやExcelにエクスポートしてカスタマイズされたレポートを作成できるようになった。バックアップエラーや非アクティブなサイトのモニタリングなど、より詳細な管理が可能になる。この機能は現在パブリックプレビュー中だ。
- 制限付きコンテンツの検出可能性(RCD): AIツールの導入に伴うセキュリティ強化策として、RCDポリシーが設定されたライブラリ内のファイルはCopilotの生成結果に表示されなくなる。これにより、適切なアクセス制御が可能になる。この機能も2024年末にパブリックプレビューが開始される。
- SharePoint上のファイルレベルM365アーカイブ: 近い将来、SharePointドキュメントライブラリ内の個別ファイルで、長期間アクセスされていないものをアーカイブできるようになる。これにより、ストレージの整理と管理が容易になる。アーカイブされたファイルは検索可能で、必要に応じて再アクティブ化できる。この機能は2025年初頭にプライベートプレビューが開始される予定だ。
これらの機能強化により、OneDriveはより安全で管理しやすいプラットフォームへと進化を遂げようとしている。特に大規模な組織や厳格なコンプライアンス要件を持つ企業にとって、これらの新機能は大きな価値をもたらすだろう。
OneDriveの未来
Microsoftは、OneDriveの将来についても野心的なビジョンを示している。今回発表された機能に加えて、さらなる革新的な機能が計画されている。
- クロスプラットフォームの写真体験: 現在モバイルアプリで提供されているAI駆動の写真管理機能を、PC、ウェブブラウザ、Macなど、すべてのOneDriveプラットフォームに拡張する予定だ。これにより、デバイスに関係なく、一貫した高度な写真管理が可能になる。
- Microsoft Designerとの統合: OneDriveに直接Microsoft Designerを統合することで、ユーザーはどこからでも簡単に写真を編集できるようになる。背景の変更、テキストの追加、不要な要素の削除など、高度な編集機能がOneDrive上で直接利用可能になる。
- パーソナライズされたビュー: AIを活用して、ユーザーのファイルや写真を自動的にグループ化し、パーソナライズされたビューを作成する機能が計画されている。家族の思い出、仕事用ドキュメント、趣味に関連するファイルなど、コンテキストに応じて自動的に整理される。
- Windows、Mac、ドキュメントライブラリへのCopilot拡張: CopilotがSharePointやドキュメントライブラリ、さらにはWindows File ExplorerやmacOS Finderにも拡張される予定だ。これにより、プラットフォームに関係なく、強力なAI機能を活用できるようになる。
これらの将来計画は、OneDriveがただのクラウドストレージサービスを超えて、AIとヒューマンインテリジェンスを融合させた次世代のデジタルワークスペースへと進化していく方向性を示している。
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