Microsoftのタスクマネージャーでは、現在メモリの速度は「MHz」表記が用いられている。これはメモリ業界が歴史的にこの指標を用いてきた名残からだが、最近のDDRメモリの速度にMHzを使用することが少なくなって来た業界の動きに沿って、Microsoftもこの表記を「MT/s」と改めるようだ。
まず改めて、メモリの速度表記についておさらいしよう。DDRメモリなどのスペック表に表記されている「MHz」はメモリモジュールが1秒間に実行できるサイクル数(百万単位)を意味する。各サイクルではメモリモジュールはデータの保存や取り出しなど、一連のアクションを実行する。例えば、3,200MHz(3,200,000,000Hz)で動作するメモリは1秒間に32億サイクルを実行できる。
次に、「MT/s(mega-transfers per second)」は1秒間に数百万回のデータ転送を行えるかという指標であり、サイクルのような状態の変化に焦点を当てるのではなく、DDRメモリの両クロック・エッジで起こるデータ転送回数を表す単位だ。
消費者向けRAMがSDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)だった遥か昔、メモリモジュールのMHzはMT/sと同じであった。当時、RAMはメモリ・サイクルごとに1回のデータ転送を行っており、例えば、100MHzの速度は100MT/sと同義だった。
しかし、2000年代初頭にDDR(Double Data Rate)SDRAMが登場すると、RAMモジュールは1サイクルに2回のデータ転送を行うようになった。これにより、クロック周波数100 MHzのメモリでは、データ転送は、実際には200 MT/sに相当するようになった。
RAMメーカーは、消費者の混乱を避けるため、ブランディングのために大きな数字を使用するようになったが、MHz表記も行った。つまり、現在DDR5 6000MHzで動作すると宣伝されているRAMは、実際には3000 MHzのクロック周波数だが、データ転送速度は6000 MT/sであり、混乱を生む状況になっている。さらに、グラフィックスカードに搭載されているGDDR5X以降のメモリソリューション(GDDR6を含む)では、QDR(Quad Data Rate)を使用できるようになっておりMHzやGHzを使用することは、グラフィックスボードのメモリ速度を表現する上で、さらに不正確なものとなっているのだ。
現在、RAMメーカーは、よりシンプルな表記のDDR5-6000(単位なし)か、まだあまり一般的でないDDR5 6000 MT/sと言った表記に移行している。Microsoftもこれに合わせて、タスクマネージャーのアップデートを行い、より正確な表記に改めるようだ。
Windows Insiderブログによると、Microsoftはこの変更をビルド22635.3570からベータユーザーに徐々に展開しているようだ。今後この表記はより広い範囲に展開されることと予想される。
Sources
- Windows Insider Blog: Announcing Windows 11 Insider Preview Build 22635.3570 (Beta Channel)
- Bleeping Computer: Microsoft tests using MT/s for memory speed in Windows 11 Task Manager
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