米国の先進バッテリーテクノロジー企業Microvast Holdingsは2025年1月9日、従来の液体電解質を完全に排除した真の全固体電池(True All-Solid-State Battery: ASSB)の開発で重要な技術的ブレークスルーを達成したと発表した。この革新的な技術は、電気自動車(EV)のバッテリーの安全性と性能を大きく向上させる可能性を秘めたものであり、この発表を受けて同社の株価は一時45%を超える急騰を見せている。
バイポーラ構造による高電圧化を実現
Microvastが開発した全固体電池の最大の特徴は、バイポーラスタッキングアーキテクチャの採用にある。この構造により、単一セル内での直列接続が可能となり、従来の液体電解質を使用したリチウムイオン電池では実現不可能な高電圧動作を実現している。
従来のリチウムイオン電池や半固体電池は、液体電解質の制約により、セルあたりの公称電圧が3.2Vから3.7V程度に制限されていた。一方、Microvastの新技術では、液体電解質を完全に排除することで、アプリケーションのニーズに応じて数十ボルト以上の高電圧動作が可能となっている。実際の性能試験では、12Vから21Vの安定した動作電圧範囲を実証している。
同社CTOのWenjuan Mattis氏は、この技術的ブレークスルーの核心として、独自開発した固体電解質分離膜の重要性を強調している。この分離膜は、先進的なポリアラミド材料をベースとし、多孔質構造を持たない設計となっている。これにより、優れたイオン伝導性と構造的安定性、長期耐久性を実現し、全固体電池技術における最も重要な技術的課題の一つを解決したとされる。
「バイポーラアーキテクチャと独自の固体分離膜の組み合わせは、バッテリー設計を簡素化するだけでなく、エネルギー密度と動作安全性を向上させます」とMattis氏は説明している。
システム全体の簡素化とコスト削減の可能性
この新技術は、セル、モジュール、パック間の相互接続数を大幅に削減することで、システム全体のアーキテクチャを簡素化している。これにより、エネルギー効率の向上と動作安全性の強化が実現されている。
Microvast CEOのYang Wu氏は、「当社の全固体電池イノベーションは、実世界における安全性と効率性の課題に対する重要な前進を表しています」と述べ、「液体電解質を排除し、スケーラビリティを重視した技術開発により、信頼性の高い安全なエネルギー貯蔵ソリューションを必要とする産業の進化するニーズに応える態勢が整いました」と付け加えた。
同社は現在、この革新的な技術の実用化に向けて、パイロット生産研究フェーズへの移行を進めている。この段階では、全固体電池特有の製造上の課題を克服するための革新的なアプローチが適用される予定だ。
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