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Mistral AI、GPT-4o miniを凌駕する小型AIモデル「Small 3.1」を公開

2025年3月18日

フランスのAIスタートアップMistral AIが、わずか24B(240億)パラメータながらGoogle GemmaやOpenAIのGPT-4o miniを上回る性能を持つ新モデル「Mistral Small 3.1」をApache 2.0ライセンスで公開した。テキスト処理能力の向上、マルチモーダル対応、12.8万トークンの拡張コンテキストを実現し、一般的なグラフィックカードや高性能Macで動作可能な軽量設計が特徴だ。

小さいながらも強力なモデルの詳細

Mistral Small 3.1は、前モデルのMistral Small 3を基盤に開発された最新モデルで、テキスト性能の向上、画像を含むマルチモーダル理解能力、そして12.8万トークンという大幅に拡張されたコンテキストウィンドウを特徴としている。

パラメータ数とは、AIモデルの「脳」の大きさを示す指標で、モデル内の調整可能な値の総数を表す。パラメータ数が多いほど複雑な情報を処理できる可能性が高まるが、必要な計算リソースやメモリも増加する。GPT-4などの大規模モデルは数千億のパラメータを持つと言われており、Mistral Small 3.1の24B(240億)は比較的小規模である。

同社によれば、このモデルはわずか24Bのパラメータ数ながら、GoogleのGemma 3やOpenAIのGPT-4o Miniなど同クラスの競合モデルを凌駕するパフォーマンスを発揮するという。

注目すべき点は、Mistral Small 3.1が150トークン/秒という高速な推論速度を実現していることだ。これにより、迅速な応答が求められる会話型アシスタントや自動化ワークフローにおける関数呼び出しなど、レイテンシーが重要なアプリケーションに適している。

加えて、 Mistral Small 3.1はマルチモーダルモデルであり、複数の形式(モード)の情報を同時に理解・処理できる能力を有している。従来の大規模言語モデルは主にテキストのみを扱うものが多かったが、マルチモーダルモデルはテキストと画像を組み合わせて理解できるため、「この写真について説明して」といった指示に応えられる。人間のように様々な情報を統合して理解できる点が特徴だ。

ハードウェア要件も比較的控えめで、単一のNVIDIA RTX 4090グラフィックカードや32GBのRAMを搭載したMacで実行できる。この軽量性により、オンデバイスでの利用やエッジコンピューティングなど、従来は大型モデルでは困難だった用途にも高度なAI機能を展開可能にしている。

アルゴリズム改良で効率性を追求するMistral AIの戦略

Mistral AIの技術的アプローチは、単に計算リソースを増やすだけの手法とは一線を画している。同社は、アルゴリズムの改良と訓練最適化技術に重点を置き、より小さなモデルアーキテクチャから最大限の性能を引き出す戦略を採用している。

この効率性重視のアプローチは、AIの普及における最も差し迫った課題の一つ—最先端システムに伴う膨大な計算コストとエネルギー消費—に対応している。より控えめなハードウェアで動作するモデルを作成することで、Mistral AIは大規模モデルが非現実的な場所でも先進的なAIをアクセス可能にしている。

Mistral AIは2024年にGoogleのDeepMindとMetaの元研究者によって設立され、約10.4億ドルの資金を調達し、約60億ドルの評価額を得ている。これはOpenAIの報告されている800億ドルの評価額と比較すればわずかだが、ヨーロッパを代表するAI企業としての地位を確立している。

オープンソース戦略と地政学的優位性

Mistral AIが新モデルをApache 2.0ライセンスの下で公開していることは、業界で一般的になりつつある閉鎖的・独占的システムとは明確に異なるアプローチである。同社の共同創業者であるArthur Menschは、ヨーロッパのデジタル主権を重視していることを強調し、「世界で最もグリーンで、主導的な独立AIラボ」としての位置づけを強調している。

この戦略は既に目に見える利益をもたらしており、同社は以前のMistral Small 3モデルの上に「いくつかの優れた推論モデル」が構築されていることを指摘している。Nous Researchによる「DeepHermes 24B」などはその一例であり、オープンな協力関係がどの単一組織も独自に達成できる以上の革新を加速できることを示している。

ヨーロッパ企業であることは、EUのAI法が施行される中で、規制上の優位性ももたらしている。Mistral AIはヨーロッパの価値観と規制上の期待に沿うよう設計されたシステムを市場に投入している。これは、複雑化するグローバルな規制環境に適合するために技術とビジネス慣行を後付けで修正しなければならないアメリカや中国の競合他社とは対照的である。

多様化するモデルポートフォリオと今後の展望

Mistral Small 3.1は同社の急速に拡大するAI製品群に加わる。同社は2月にアラビア語と文化に特化したSabaモデルをリリースし、今月初めにはPDF文書をMarkdownファイルに変換するMistral OCRを導入した。これらの専門ツールは、フラッグシップの大規模言語モデルMistral Large 2、マルチモーダルアプリケーション向けのPixtral、コード生成のためのCodestral、エッジデバイス向けに最適化されたモデル群「Les Ministraux」などの広範なポートフォリオを補完している。

Mistral Small 3.1は現在、Huggingfaceを通じてベースバージョンインストラクトバージョンとしてダウンロード可能で、Mistral AIのAPI経由でも利用できる。Google Cloud Vertex AIプラットフォーム上でも提供されており、今後数週間以内にNVIDIA NIMMicrosoft Azure AI Foundryでも利用可能になる予定だ。


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