欧州連合(EU)のデジタル市場法(DMA)が施行され、AppleやGoogleと言った“ゲートキーパー”と指定されたプラットフォーマー達は、これまでその圧倒的な影響力を行使して享受していた恩恵の一部を早くも手放し始めているようだ。Reutersの報道によれば、EU圏で端末のデフォルトWebブラウザが簡単に切り替えられるような変更が義務化されたことで、小規模なWebブラウザの人気が高まっている事が明らかになった。
これまでもAndroidやiOSでデフォルトのWebブラウザを変更することは可能だったが、以前は、その設定変更手順は(意図的に)複雑で分かりにくい物になっており、ハイテク大手が大多数のユーザーに独自のブラウジングサービスを無料で提供する一方で、広告ターゲティングに使用するデータを収集することに一役買っていた。これに懸念を示したEUは、ユーザーがより優れた、あるいはよりプライベートなWeb閲覧体験を提供するWebブラウザに簡単にデフォルト設定を変更出来るような変更を義務化したのだ。
Reutersが今回6社からデータを収集したところ、EUユーザーの多くが、選択画面を提示されると、GoogleのChromeやAppleのSafariのようなOSのデフォルトブラウザから、よりプライバシー重視のオプションに切り替えることが確認出来たという。特にEUではiPhoneのシェアが高いため、Safariからの移行が多く、“Appleが最大の敗者”になっており、DMAの下では、”小さなブラウザの成長は現在Safariの犠牲の上に成り立っている”とReutersは指摘している。
一部のインディーズブラウザは、ユーザーのSafari離れによって他のブラウザよりも恩恵を受けている。一例として、キプロスを拠点とする、“完全なプライバシー”が確保されたWebブラウジングを謳うAlohaブラウザは、DMAが3月7日に施行されてからの1ヶ月間で、EU圏内の総ユーザー数が3月に250%急増したとReutersに語っている。
Appleは現在、EUでDMA違反の可能性について調査を受けている。欧州委員会は、Appleが選択画面で利用可能な選択肢をすべてユーザーに提供していないため、デフォルトのWebブラウザとしてSafariから変更するかどうかについて「エンドユーザーから十分な情報を得た上で決定する能力を奪っている」と懸念を表明している。
Reutersは、例えば、DuckDuckGoやOperaのような人気のある代替ブラウザは、Appleの選択画面リストに27の加盟国すべてで含まれていると報じた。しかし、Alohaは26カ国、Ecosia は13カ国、Vivaldiは8カ国でしかリストアップされていないという。
EUの調査は、Open Web Advocacy(OWA)と呼ばれる、ブラウザ技術の独占を阻止し、技術の進歩を目指すソフトウェアエンジニアの団体が、iOSユーザーがデフォルトブラウザを変更できないようにするために「ダークパターン」を使用しているとしてAppleを非難した、先月の公開ワークショップの後に開始された。
OWAは、「AppleのエンジニアがSafariの設定ページにコードを追加し、Safariがデフォルトの場合はデフォルトのブラウザを変更するオプションを非表示にし、他のブラウザがデフォルトの場合は目立つように表示する」という「驚くほど大胆なダークパターン」によって、Appleが「悪意を持って」「ユーザーの選択を弱体化させる」ことを意図していると非難した。
調査開始から3ヵ月以内に、EUはAppleのDMA遵守に関する予備的調査結果を共有する予定とのことだ。OWAは欧州委員会(EC)に対し、AppleがデフォルトブラウザとしてSafariを簡単に切り替えられるようにするため、より多くの措置を講じるよう促しており、おそらく最も切迫しているのは、”デフォルトがSafariの場合、デフォルトブラウザを切り替えるオプションを隠すという悪意あるダークパターン”を取り除くことだろう。
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