Appleと日本のデジタル庁は、2025年春を目処に、身分証明書である「マイナンバーカード」をAppleウォレットで利用できる様になる、デジタル身分証明書機能を追加すると発表した。これは、Appleウォレットの身分証明書機能が米国外で展開される初の例となり、国民全員が利用できる身分証明書機能がスマートフォンに搭載される世界初の事例となる。
物理的なカードと同様にiPhone搭載のマイナンバーカードが利用可能に
Appleウォレットにマイナンバーカードが追加される事で、物理的なカードと同じようにコンビニエンスストアで公的な証明書等を発行したり、病院や医療機関で保険証として提示したり、「マイナポータル」iOSアプリにアクセスしてオンラインの行政サービスを受ける事が可能となる。
これを実現するのがiOS 15で実装された身分証明書カードの追加機能だ。これは、iPhoneで身分証明書をスキャンするだけで、ユーザーの身分証明書情報が、Apple Payをプライベートでセキュアなものにしているのと同じハードウェアエレメントテクノロジーであるSecure Elementに暗号化されて保存され、Appleウォレットで利用できるようになる。
Appleウォレットの身分証明書は、モバイルデバイスで身分証明書や運転免許証を提示する際の消費者のプライバシー保護について明確なガイドラインを定めているISO 18013-5シリーズとISO 23220シリーズの規格に対応しており、必要以上の情報を提示しないなどプライバシーへの配慮も行われている。
ユーザーは身分証明書を提示する際は、Face IDやTouch IDで認証し、非接触IDカードリーダーに自分のiPhoneをかざすだけで対面での身分証明書を提示できる。これにより、「タッチして身分を確認」と言った事が可能になり、物理的なカードを相手に預けると言った偽造のリスクを軽減することに繋がる。
特筆すべきは物理的なカードとは異なり、「相手が求めている情報が何か」「情報は相手に保存されるのか」「提示だけなのか」と言った、自分の身分証明書情報の利用用途が明確に開示されるようになり、生年月日や住所など、開示する必要のない情報はそもそも相手に送信しない仕様となっており、利用者にとってプライバシー面での安心・安全にも繋がるという点だ。加えて、いつ誰に身分証明書情報を提示したのかが履歴としてiPhoneに保存される。不正利用が行われたのかどうかも確認出来るようになるという事は物理的なカードにはなかった利点だ。
また、iPhoneの紛失時はリモートで停止する機能も実装され、物理的なカードのような紛失時のリスクも軽減される。
なお、Androidにはまだ同様の機能はなく、オンライン行政サービスを利用するための電子証明書機能しかない。今後はiOSのようなマイナンバーカードの券面記載事項提示にも対応するため、Googleウォレットへの対応など、OSレベルでの搭載が期待されるところだ。
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