脳とコンピュータをつなぐインターフェース(BCI)を開発するNeuralink社は、脳インプラントを使用して思考だけでロボットアームを操作する新たな臨床試験の承認を発表した。この試験は、すでに進行中のPRIME試験の参加者を対象に、身体の自由度回復に向けた重要な一歩となる。
新たな臨床試験「CONVOY Study」の概要
Neuralinkが発表した新しい試験「CONVOY Study」は、同社の脳インプラント「N1 Implant」を使用して、思考によるロボットアームの制御を目指している。この試験は、現在実施中の四肢麻痺患者を対象としたPRIME試験の参加者から被験者を募る形で行われる。
この取り組みについて同社は「デジタルの自由だけでなく、身体の自由を取り戻すための重要な第一歩である」と位置付けている。特筆すべきは、カナダのヘルスケア当局も先週、同社の試験実施を承認し、トロント大学健康ネットワークが複雑な脳神経外科手術の実施施設として選定されたことである。
最初の被験者による成果と課題
2024年1月29日、30歳のNoland Arbaughが人類初のNeuralink脳インプラント被験者となった。飛び込み事故で肩から下が麻痺していた同氏は、インプラントを通じて思考だけでマリオカートやチェスをプレイできるようになり、これは一部で「サイボーグ能力」とも評される成果を上げた。
しかし、試験過程では予期せぬ課題も発生している。インターフェースと脳をつなぐ一部のスレッドが収縮するという医学的合併症が報告された。これに対してNeuralink社は、チップのアルゴリズムを調整することで問題に対処したとしている。
既存研究との比較と展望
この種の研究は必ずしも前例がないわけではない。2015年にはカリフォルニア工科大学の研究チームが、「神経補綴装置」と呼ばれる装置を使用して、パラプレジア患者のErik Sortoが思考でロボットアームを操作することに成功している。Sorto氏は、この技術により握手や「じゃんけん」、さらには自力でビールを飲むことさえ可能になった。
現在、Neuralink社は頸髄損傷や筋萎縮性側索硬化症(ALS)により両手の使用が制限されている患者向けに患者登録を開始している。この取り組みは、身体機能の回復を目指す患者たちに新たな希望をもたらす可能性を秘めている。
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