ゲーム業界の巨人、任天堂が自社の「ニンテンドーミュージアム」でWindowsで動作する任天堂コンソールのエミュレータを使用している可能性が浮上した。これは、同社が長年にわたってエミュレータに対して取ってきた厳しい姿勢と真っ向から対立する行為だ。
任天堂ミュージアムで起きた予想外の出来事
XユーザーのChrisMack32氏が投稿した動画が、この騒動の発端となった。動画には、日本のニンテンドーミュージアムの展示ブースで、スーパーファミコンのコントローラーがUSBケーブルを介して接続されている様子が映っていた。しかし、そのコントローラーを取り外すと、Windowsデバイスの切断を示す特徴的な音が鳴り響いたのだ。
この予想外の発見は、任天堂が自社の歴史的なゲームをWindowsベースのPCでエミュレートしている可能性を強く示唆している。皮肉なことに、これは同社が長年にわたって法的に追及してきた行為そのものだ。
任天堂のエミュレーターに対する厳しい姿勢
任天堂は長年にわたり、エミュレーターに対して非常に厳しい姿勢を貫いてきた。同社の公式Webサイトには、古いタイトルをコピーまたはダウンロードすることは認められないと明記されている。さらに、オリジナルゲームを所有している場合でも、エミュレーター用のROMをダウンロードすることは著作権法違反になると警告している。
この姿勢は単なる建前ではない。任天堂は実際に、エミュレーター開発者やROMを配布するWebサイトに対して法的措置を講じてきた。その一例が、2023年に人気のオープンソースSwitchエミュレーター「Yuzu」の開発元であるTropic Haze社に対する訴訟だ。結果として、Tropic Haze社は240万ドルの賠償金支払いと全ての事業停止に同意せざるを得なくなった。
また、任天堂は2023年にValveに対し、「Dolphin」エミュレーターのSteamストアでの配信を阻止するよう要請した。さらに最近では、別のSwitchエミュレーター「Ryujinx」の開発者に対して、アプリケーションの開発中止とGitHubリポジトリの削除を求めている。
任天堂はエミュレーターが「イノベーションを害する」と主張しており、この立場は業界内外で物議を醸してきた。しかし、今回の発見により、同社の主張と行動の矛盾が浮き彫りとなり、その真意が問われることになりそうだ。
ミュージアムでのエミュレーター使用を示す決定的証拠
ChrisMack32氏が投稿した動画は、任天堂ミュージアムでのエミュレーション使用を強く示唆する決定的な証拠となっている。動画では、スーパーファミコンのコントローラーがUSB接続されている様子が確認できる。これだけでも現代的な改造が施されていることがわかるが、さらに興味深いのはコントローラーの接続と切断時に聞こえる音だ。
コントローラーを取り外すと、Windows特有の「ディン・ドン・ダン」というデバイス切断音が鳴り響く。再接続時には、Windowsデバイスの接続を示す音も確認できる。これらの音は、展示ブースの裏側でWindowsマシンが動作していることを如実に物語っている。
さらに、画面には「スーパーマリオワールド」が表示されていたという。このスーパーファミコン用タイトルがWindows PCで動作しているということは、エミュレーターが使用されている可能性が極めて高い。
技術的な観点から見ると、この設定には利点がある。オリジナルのスーパーファミコンハードウェアを各ブースに設置し、メンテナンスを行うよりも、Windows PCでエミュレーターを動作させる方が管理が容易だからだ。しかし、この便利さこそが、任天堂が長年批判してきたエミュレーションの利点そのものである。
一方で、セキュリティの専門家からは懸念の声も上がっている。USB接続が露出していることで、悪意のある第三者が容易にシステムに接続し、セキュリティを侵害する可能性があるからだ。これは、エミュレーション使用の是非以上に深刻な問題かもしれない。
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コメント
コメント一覧 (1件)
任天堂は無断でエミュレータを作ったりする事を禁止しているのであって、
任天堂が自社製のエミュレータを持っているのは「当たり前」です。
プログラムを変えるたびにゲーム機本体でソフトをテストしたりするはずもありません。
ミュージアムでも自社製のエミュレータを使用していて何もおかしい事ではありません。