NVIDIAの次世代AI GPU「Blackwell」の導入に遅れが生じる可能性については既に報じられているが、新たにNVIDIAの重要なパートナーであるデータセンター機器プロバイダ Super Micro Computer(以下、Super Micro)の四半期決算説明会の席でも同様の情報がもたらされたことで、噂が現実身を帯びてきている。
GB200搭載サーバーの出荷は当初見積もりから10万台減との試算も
Super MicroのLiang CEOは、NVIDIAのBlackwell GPUに関する遅延の可能性について言及し、「NVIDIAに遅延がある可能性があると聞いている」と述べた。しかし、Liang氏はこれを「通常の可能性」として扱っており、技術企業にとってはよくあることだと示唆した。
投資家達からの質問に応答する形で、Liang氏はBlackwellの出荷スケジュールが後ろ倒しになると、Super Microでは見ていると言及している。同氏によれば、2024年第3四半期(9月末まで)にはBlackwellの出荷量は見込めず、第4四半期(12月末まで)でも「非常に少量」のエンジニアリングサンプルにとどまる見通しだという。本格的な出荷は2025年第1四半期(3月末まで)になると予想しているようだ。
遅延の背景には、設計上の問題がある可能性が指摘されている。JPMorganの分析によると、NVIDIAのBlackwellこと「GB200 」チップを搭載したAIサーバーの2024年の年間生産量は、当初予想の60万台から50万台に減少する見込みだという。この生産量の減少は、設計上の問題に起因する可能性が高い。NVIDIAは現在、エンジニアリング設計の変更を行っており、これにはさらなる時間とコストがかかることが予想される。
一方で、NVIDIAは公式声明で「Hopperの需要は非常に強く、Blackwellの幅広いサンプリングが開始され、生産は2024年後半に予定通り拡大する」と述べている。しかし、同社は具体的な噂についてはコメントを控えており、状況の不透明さが増している。
この遅延が業界に与える影響については、専門家の間で見解が分かれている。Bernsteinのアナリスト、Stacy Rasgon氏は「NVIDIAの競争力は現在非常に大きいため、3ヶ月の遅延が重大な市場シェアの変動を引き起こすとは考えていない」と分析している。しかし、MicrosoftなどのAI大手企業による大規模AIクラスターの展開が2025年半ばまで遅れる可能性があり、AI業界全体に波及効果をもたらす可能性も指摘されている。
さらに、この状況はAMDやIntelなどNVIDIAの競合他社にとって、次世代AI製品を投入する機会となる可能性もある。しかし、これらの企業の次世代AIアーキテクチャも2025年半ばまでのリリースを予定しているため、大きな市場シェアの変動には至らない可能性が高いとの見方も強い。
Blackwellの遅延は、単にNVIDIAの製品スケジュールの問題にとどまらず、AI業界全体の発展ペースに影響を与える可能性にも繋がりそうだ。AI技術の進歩は多くの産業に影響を与えており、Blackwellの導入遅延は、自動運転車の開発やヘルスケア分野でのAI応用など、幅広い分野に波及する可能性がある。
今後、NVIDIAがこの問題にどのように対応し、Blackwellの生産スケジュールをどのように調整するかが注目される。同時に、競合他社の動向や、大手テクノロジー企業のAI戦略の変更なども、業界全体の動向を左右する重要な要素となるだろう。
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