NVIDIAの画期的なAI NPCテクノロジーが、近未来の戦闘メカゲーム『Mecha BREAK』で初めて実用化されることが明らかになった。2025年に PC、Xbox X/S、PlayStation 5 向けに発売予定のこのゲームで、プレイヤーは自然言語を用いてゲーム内キャラクターと対話できるようになる。この革新的な機能は、NVIDIAが開発したAvatar Cloud Engine(ACE)for Gamesを基盤としており、ゲーム体験に新たな次元をもたらすことが期待されている。
カメラを通してプレイヤーを認識することも出来る
『Mecha BREAK』は、プレイヤーが様々なタイプのメカを選択し、地上と空中で戦闘を繰り広げるマルチプレイヤーゲームだ。『Armored Core』シリーズに似た要素を持つが、シングルプレイヤーモードは含まれていない。このゲームの特徴は、AI NPCとの自然な対話にある。プレイヤーは音声でNPCに話しかけ、ミッションの詳細やメカの情報を尋ねることができる。さらに興味深いのは、AIがWebカメラを通じてプレイヤーや周囲のオブジェクトを「認識」できる点だ。これにはOpenAIのGPT-4oが使用されている。
技術面では、NVIDIAが開発した「Nemotron-4 4B Instruct」と呼ばれる軽量なLLMが使用されている。この モデルは、わずか2GBのVRAMで動作可能なため、RTX 2060から最新のRTX 4090まで、幅広いRTX GPUでローカル処理が可能だ。これにより、応答速度が約300ミリ秒と非常に高速になっている。一方、クラウドベースのより強力なAIモデルは数秒の応答時間を要する。
NPCの音声生成にはクラウドベースのAIが使用され、Elevenl absを介して接続される。また、キャラクターの表情をよりリアルに表現するため、NVIDIAのAudio2Face-3D NIMが採用されている。音声認識には OpenAIのWhisperが使用され、異なるアクセントを持つプレイヤーの入力も理解できるという。
しかし、現段階では課題も存在する。デモでのNPCの応答は平板で魅力に欠け、本物の人間のような対話感には至っていない。The Vergeの Sean Hollistor氏が1月に行ったNVIIDA ACEのデモでは、キャラクターが本物の人間らしく感じられず、対話にインスピレーションが欠け、NPCの返答に頻繁な遅延があったと指摘されている。
また、『Mecha BREAK』では現在、単一のNPC(プレイヤーのメカニック)にのみこの技術が適用されており、ゲーム全体での活用には至っていない。さらに、NVIDIA RTX GPUを搭載していないPC でこのAI NPCがどのように機能するかは不明確だ。クラウドベースのACEを使用するか、非AI版のNPCが代替となる可能性が示唆されている。
それでも、この技術がゲーム業界にもたらす可能性は計り知れない。プレイヤーとNPCの対話がよりダイナミックで予測不可能なものになり、ゲーム体験の没入感が大幅に向上する可能性がある。例えば、デモではプレイヤーが会話を通じてメカの塗装を変更するシーンが紹介された。
今後、この技術がさらに洗練され、より多くのゲームに導入されることで、ゲームの世界がより生き生きとしたものになることが期待される。プレイヤーの反応次第では、NPCが独自のバックストーリーやパーソナリティを発展させるAI駆動の未来が訪れるかもしれない。ゲーム開発者たちは、この新技術がもたらす可能性と課題に注目し、より魅力的で没入感のあるゲーム体験の創造に向けて取り組んでいくだろう。
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