フィンランドが、世界で初めて使用済み核燃料の最終処分に挑む。同国南西部の森林地帯に建設中の地層処分施設「Onkalo」は、高レベル放射性廃棄物を10万年もの間、安全に保管することを目指している。この画期的なプロジェクトは、核エネルギーの長期的な持続可能性に向けた重要な一歩として注目を集めている。
世界初の核廃棄物地層処分施設「Onkalo」
Onkalo(フィンランド語で「小さな洞窟」の意)は、フィンランドの首都ヘルシンキから約240km離れたオルキルオト島に位置している。この施設は、2025年または2026年に運用を開始する予定で、使用済み核燃料を地下400メートル以上の深さにある岩盤内に埋設することを目的として建設された。今後10万年間核燃料廃棄物を保管する計画だ。
核燃料に含まれる放射性物質の一部は寿命が非常に長いため、自然界から隔離する必要がある。 このため、最終処分用キャニスターは、使用済み燃料の放射能が環境に害を与えないレベルまで減少するのに十分な期間補完しなければならない。Onkaloは密閉され不浸透性の状態を保つように設計されているという。
Onkaloの建設を担当しているPosiva社の広報責任者、Pasi Tuohimaa氏は、「Onkaloプロジェクトは基本的に、使用済み核燃料の封入プラントと処分施設を建設するものです。これは一時的なものではなく、恒久的な解決策です」と、CNBCに説明している。
処分の方法は、高度な工学技術を駆使した多重バリアシステムを採用しており、使用済み核燃料は、まず水密性の高い銅製キャニスターに封入される。これらのキャニスターは、地下深くの岩盤内に掘られたトンネルと部屋に配置され、人間と自然環境から完全に隔離される。
施設の構造は、螺旋状のアクセストンネル、4本の垂直シャフト(人員用、キャニスター用、および2本の換気用)、トンネル、および技術室から成る。2020年までに、既に建設のために50万立方メートル以上の岩石が掘削されている。これは、その場所が核廃棄物貯蔵庫の建設に適しているかどうかを調べるために、かなりの量のテストと調査が行われた後に行われた。
このプロジェクトは、スウェーデンの原子力燃料・廃棄物管理会社が開発した「KBS-3」方式に基づいている。この方法は、複数の工学的バリアを用いて使用済み核燃料の長期的な安全性を確保するもので、一つのバリアが万が一機能しなくなっても、放射性廃棄物の隔離が損なわれないよう設計されている。
Onkaloプロジェクトの意義と課題
Onkaloプロジェクトは、核エネルギーの持続可能性に向けた重要な一歩として評価されている。フィンランドの気候大臣、Kai Mykkänen氏は、「過去10年間で見てきたように、核エネルギーはヨーロッパのグリーンディールにとって非常に重要な方法であることが分かっています。特にアジアや米国が化石燃料による電力生産から脱却したいのであれば、なおさらです」と述べている。
このプロジェクトは、他国にとってのモデルケースとなる可能性がある。ヘルシンキ大学の放射化学教授、Gareth Law氏は、「今後100,000年以上にわたって存在し続ける非常に危険な廃棄物を実際に処分できる解決策があることを示す国が出てきたことは、それが実現可能であることを示しています」と評価している。
Law氏はさらに、フィンランドが使用済み核燃料の地層処分において、他国より「少なくとも10年先を行っている」と指摘する。次に同様の処分場を完成させる可能性が高いのは隣国のスウェーデンだが、多くの国々はまだ計画段階にあるか、廃棄物の処分場所を探している段階にとどまっている。
しかし、長期的な安全性の保証に関しては議論も存在する。使用済み核燃料の長期的な安全性を誰が保証できるのか、また気候危機との闘いにおいて原子力をどの程度使用すべきかについて、議論は尽きない。
現在、世界の電力の約9%を原子力エネルギーが供給しているが、その役割については意見が分かれている。支持者は、原子力エネルギーが低炭素であり、各国が電力を生産しながら排出量を削減し、化石燃料への依存を減らすのに重要な役割を果たす可能性があると主張する。一方で、一部の環境団体は、原子力産業はより安価でクリーンな代替エネルギーへの高価で有害な妨げになると指摘している。
Onkaloプロジェクトの進展は、核廃棄物処理の新たな時代の幕開けとも言えるだろう。フィンランドの取り組みが成功すれば、それは他国にとっても重要な参考事例となり、核エネルギーの持続可能性に関する議論に大きな影響を与える可能性がある。しかし、10万年という途方もない時間スケールでの安全性の保証は、技術的にも倫理的にも、人類にとって前例のない挑戦であり続けるだろう。
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