OpenAIは、人工知能チャットボット「ChatGPT」に新たな機能「Canvas」を追加したことを発表した。この革新的な機能は、ユーザーとAIの共同作業を一新し、ライティングおよびコーディングプロジェクトの効率を劇的に向上させることが期待されている。
Canvasの概要と主要機能
Canvasは、従来のチャットインターフェースとは別に、専用の作業ウィンドウを提供する。この新しいアプローチにより、ユーザーはChatGPTとより自然に協力しながら、複雑なプロジェクトに取り組むことが可能になる。似た機能としては、AnthropicのClaudeが提供する「Artifacts」が思い出されるだろう。OpenAIのプロダクトマネージャーであるDaniel Levine氏は、「これはChatGPTとより自然に協力するためのインターフェースです」と述べている。
Canvasの主な特徴
- 別ウィンドウでの作業スペース:ユーザーは通常のチャットウィンドウの横に、プロジェクト専用のワークスペースを持つことができる。
- コンテキスト理解の向上:ChatGPTはプロジェクト全体を把握し、より適切な提案や編集を行うことが可能になる。
- ターゲットを絞った編集:ユーザーは特定のセクションをハイライトし、ChatGPTに焦点を当てて欲しい箇所を正確に指示できる。
- インライン編集とフィードバック:コピーエディターやコードレビュアーのように、ChatGPTはプロジェクト全体を考慮しながら、インラインでフィードバックや提案を行う。
- ユーザーコントロール:ユーザーは直接テキストやコードを編集し、プロジェクトの主導権を握ることができる。
現在、Canvasはベータ版として、ChatGPT PlusおよびTeamユーザーに提供されている。EnterpriseおよびEduユーザーは来週にアクセスが可能となる予定だ。さらに、OpenAIはベータ期間終了後、全てのChatGPT無料ユーザーにもCanvasを提供する計画を明らかにしている。
ユーザーは、モデル選択メニューから「GPT-4o with canvas」を手動で選択することで、この新機能を利用できる。また、OpenAIによると、長文の出力や複雑なコーディングタスクなど、別のワークスペースが有用だとChatGPTが判断した場合、自動的にCanvasウィンドウがポップアップする。さらに、「use canvas」とプロンプトに入力することで、プロジェクトウィンドウを自動的に開くこともできる。
Canvasの技術的側面と今後の展望
OpenAIは、Canvasの開発にあたり、AIモデルを「クリエイティブパートナー」として協力できるよう訓練した。この過程で、以下のような核となる行動を開発した:
- 文章作成やコーディングのためのCanvas起動
- 多様なコンテンツタイプの生成
- ターゲットを絞った編集
- 文書の書き直し
- インラインでの批評提供
これらの行動を評価するため、OpenAIは20以上の自動内部評価を実施した。また、新しい合成データ生成技術を用いて、人間が生成したデータに頼ることなく、モデルの中核的な行動を迅速に改善することに成功した。
特筆すべきは、Canvasを統合したモデルの性能向上だ。OpenAIによると、開発者向けコメントの生成において、Canvasモデルは単純なGPT-4のゼロショット(例示なしの)プロンプトと比較して、精度(正しい情報の提供率)で30%、品質(内容の明確さと適切さ)で16%の向上を示したという。
しかし、Canvas開発においていくつかの課題も浮き彫りになった。その一つが、Canvasを起動するタイミングの定義だ。OpenAIはモデルに、「コーヒー豆の歴史についてブログ記事を書く」といったプロンプトでCanvasを開くよう教えつつ、「夕食の新しいレシピを教えて」といった一般的な質問に対しては過剰に反応しないよう調整した。
また、編集行動の調整も課題となった。特に、ターゲットを絞った編集と全体の書き直しのバランスをとることに注力した。現在のモデルは、ユーザーがインターフェースを通じて特定のテキストを選択した場合にターゲットを絞った編集を行い、それ以外の場合は書き直しを優先するよう訓練されている。例えば、ユーザーが特定の文や段落を選んで「ここだけ修正してほしい」と指示した場合、モデルはその部分に焦点を当てた編集を行う。一方、全体的な文章のトーンや構成を改善したい場合は、モデルは書き直しを提案する。
OpenAIは、Canvasをさらに進化させる計画を明らかにしている。具体的には、リアルタイムでの共同編集機能の追加、プロジェクト管理ツールとの統合、さらには音声入力を利用したインターフェースの強化が予定されている。「AIをより有用でアクセスしやすいものにするには、私たちがAIとどのように相互作用するかを再考する必要があります」とOpenAIは述べ、Canvasを単なる機能追加ではなく、AI利用の新しいアプローチとして位置付けている。
Canvasと検索機能の統合
OpenAI開発者のKarina Nguyen氏は、Canvasの検索機能との統合を強調している。ユーザーは特定の情報についてインターネット検索を指示し、その結果をCanvasでレポートとしてまとめることができるようになる。Nguyen氏は、Canvasを人間とAIのより協調的な対話を実現するためのチャットインターフェース進化の一環として捉えている。
Canvasは、単純なチャットを超えて、より複雑な作業を可能にする新しいインターフェースとして位置づけられている。OpenAIは、この機能がChatGPTのローンチ以来、2年ぶりの大規模な視覚的インターフェースのアップデートであると強調している。
Source
- OpenAI: Introducing canvas
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