いまや、企業価値90億ドルとされるAIスタートアップPerplexityは、リアルタイムのWeb検索機能を提供する「Sonar API」の一般提供を開始した。このAPIは、既存の学習データのみに依存する他社のAIサービスと異なり、リアルタイムでWebに接続し、最新の情報源から回答を生成する機能を特徴としている。
2つのティアで幅広いニーズに対応
Perplexityは、今回のAPI提供において、異なるニーズに対応する2つのサービスティアを用意した。基本版となる「Sonar」は、高速なレスポンスと効率性を重視したサービスで、127,000トークンのコンテキストウィンドウを持つ独自開発のLLMを採用している。
より高度な機能を必要とする企業向けには「Sonar Pro」を提供する。200,000トークンのコンテキストウィンドウを備え、複雑な質問や追跡調査にも対応可能な設計となっている。特筆すべき点として、基本版の2倍の引用数を提供し、情報の信頼性向上を図っている。
価格設定と市場戦略
Sonarの価格設定は、1,000回の検索あたり5ドルを基本料金とし、入出力それぞれ75万語(約100万トークン)あたり1ドルのトークン料金が加算される。一方、Sonar Proは入力が75万語あたり3ドル、出力が15ドルと、より高額な料金設定となっている。
この価格設定は、Google、OpenAI、Anthropicなどの競合他社に対する直接的な挑戦と見られている。特に、SimpleQAベンチマークにおいてSonar ProがF-score 0.858を達成し、主要な競合モデルを上回る性能を示したことは、市場での競争力を裏付ける物と言えるだろう。
実績と将来展望
Sonar APIの市場投入は、すでに具体的な成果を上げ始めている。注目すべき導入事例として、セールス支援プラットフォームのCopy AIがある。同社では、Sonar APIを活用することで営業担当者一人あたり週8時間のリサーチ時間を削減し、業務効率を20%向上させることに成功した。この成果は、AIによる情報検索の自動化がもたらす具体的な生産性向上を示す好例といえる。
医療分野では、医師向けプラットフォームのDoximityがSonar APIを採用している。同社は、医師が最新の治療ガイドラインや保険償還に関する情報を、信頼性の高い医学ジャーナルから迅速に取得できる環境を整備した。特に医療現場では情報の正確性が極めて重要であり、Sonarの引用機能付きの回答は、医師の意思決定を支援する上で重要な役割を果たしている。
さらに、大手テクノロジー企業であるZoomは、AI Companion 2.0にSonar Proを統合し、ビデオ会議プラットフォームの機能を大幅に拡張した。Zoomの AI Products & Responsible AI部門シニアプロダクトマネージャーのWill Siegelinによれば、この統合により、ユーザーはビデオ会議中にブラウザを離れることなく、リアルタイムの情報検索が可能になったという。この実装は、AIがもたらすシームレスなワークフロー統合の好例として評価されている。
こうした実績を背景に、Perplexityは急速な成長を遂げている。Institutional Venture Partnersが主導する5億ドルの資金調達を完了し、企業価値は90億ドルに達した。現在の年間経常収益は500万から1,000万ドルの規模とされており、Sonar APIの一般提供開始は、この数字を大きく押し上げる可能性を秘めている。
特に注目すべきは、Perplexityが採用するリアルタイムウェブ接続という技術的アプローチである。従来のAIモデルが抱える最大の課題の一つは、学習データの鮮度であった。トレーニングデータの更新には多大なコストと時間を要し、最新の情報へのアクセスが制限されるという本質的な問題があった。これに対してSonar APIは、リアルタイムでウェブに接続することで、常に最新の情報源からデータを取得できる。この特徴は、市場動向や技術トレンドの追跡が重要な企業ユーザーにとって、極めて魅力的な差別化要因となっている。
Source
- Perplexity: Introducing the Sonar Pro API
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