Google Pixel 9シリーズは、前モデルから大幅に搭載メモリが増えているが、これに関し、AIパフォーマンスの向上を目指して革新的なアプローチを採用していることが明らかになった。Pro、Pro XL、Pro Foldモデルでは、搭載されている16GBのRAMのうち約3GBが常時AI処理のために確保されている。この戦略は、AI機能の即応性を大幅に向上させる一方で、ユーザーが実際に利用できるRAM容量に影響を与える可能性がありそうだ。
Pixel 9シリーズにおけるAI専用RAM確保の詳細分析
Google Pixel 9シリーズのProモデルでは、AI処理のために約2.64GBのRAMが常時確保されていることが判明した。この情報は、adbを使用したデバッグ情報の綿密な解析により明らかになった。具体的には、Pixel 9 Pro XLモデルにおいて、2.91GBのUnevictableおよびMLockedRAMが確認された。これらの領域は、通常のアプリケーションでは使用されず、AIコアとEdgeTPUサービス専用に割り当てられている。
この専用RAM確保の仕組みをさらに詳しく見ていくと、興味深い構造が浮かび上がる。AI Coreアプリケーションは2.72GBのRAMを占有し、edgetpu_app_serviceは2.63GBを使用している。これらのサービスはほぼ同じメモリ空間にマッピングされていると推測される。AI CoreがモデルやユーザーデータをTPUサービスがアクセス可能なRAM空間に配置することで、Google独自のAIプロセッサがメモリを重複させることなく計算を実行できる仕組みになっているようだ。
一方で、標準のPixel 9モデルやPixel 8 Proでは、このようなAI専用のRAM確保は行われていない。これらのモデルでは、Unevictable RAMはわずか0.26GB程度にとどまっている。Pixel 9シリーズでは、特にPro以上のモデルにおいてAI機能が重視されているようだ。
AI Coreアプリケーションは、Android 14で導入された新機能で、Gemini Nanoのモデル管理、ランタイム、安全機能などを担当している。Pixel 9 ProシリーズではこのAI Coreが常にRAMに読み込まれた状態で待機しており、最大限の応答性を確保している。これにより、ユーザーがAI機能を呼び出した際に、ストレージからの読み込み時間を省略し、瞬時に処理を開始できる利点がある。
この施策の結果、Pixel 9 Proシリーズは常に3GB近くのRAMをAI機能のために確保している一方で、ユーザーが一般的なアプリやゲームに使用できるRAM容量は実質的に13GB程度となる。これは、AI機能を頻繁に使用するユーザーにとっては大きなメリットとなるが、AI機能をあまり使わないユーザーにとっては、一部のRAMが常に使用できない状態となる可能性がある。
さらに、この戦略はRAM管理にも影響を与える。通常、スマートフォンのRAMは動的に管理され、必要に応じてアプリケーション間でメモリが再配分される。しかし、AI専用に確保されたRAMは「Unevictable」つまり退避不可能な状態にあるため、他のアプリケーションがメモリを必要とする場合でも、この領域は解放されない。これにより、AI機能の安定性と即応性は向上するものの、極端な多重タスク時には他のアプリケーションのパフォーマンスに影響が出る可能性もある。
Googleのこの取り組みは、スマートフォンにおけるAI機能の重要性が増していることを示す興味深い例といえる。同時に、ハードウェアリソースの割り当てにおいて、特定の機能を優先することの利点とトレードオフを浮き彫りにしている。今後、他のスマートフォンメーカーがどのような対応を取るのか、AIとハードウェアリソースの最適化という観点から、各社の姿勢を推し量ることが出来そうだ。
Source
- Android Authority: Tested: Google’s Pixel 9 Pro models only have 13GB RAM for apps
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