拡張現実(AR)ゲーム『ポケモンGO』で世界的な大ブームを巻き起こしたNianticが、ゲーム開発部門の売却を検討していると報じられている。Bloombergが匿名の情報筋の話として伝えたところによると、同社はサウジアラビアに拠点を置くSavvy Games Group傘下のモバイルゲーム開発会社Scopelyとの交渉を進めているという。
Niantic、Scopelyとの取引を模索
交渉に詳しい情報筋によると、数週間以内に取引が発表される可能性があり、評価額は約35億ドル(約5000億円)に達する見込みだ。報道によると、買収候補として有力視されているのは、モバイルゲーム企業のScopelyである。しかし、Bloombergは、交渉は初期段階であり、取引が最終的に合意に至る保証はないと指摘している。
現時点では、Niantic、Scopelyの両社とも、この報道に関して公式なコメントを発表していない。
ARゲームのパイオニア、ポケモンGOで世界を席巻
2010年にGoogleの社内スタートアップとして誕生したNianticは、2015年にGoogleの組織再編を経て独立した。AR(拡張現実)技術を駆使したゲーム開発の先駆者として知られ、位置情報ゲームという新たなジャンルを切り開いた。
初期の代表作『Ingress』は、革新的なゲーム性でコアなファンを獲得。そして2016年、Nianticは『ポケモンGO』をリリースし、世界的な大成功を収める。同作は瞬く間に世界中で社会現象を巻き起こし、リリースからわずか1年で5億ダウンロードを突破。2020年までには累計収益が60億ドルを超えるという、驚異的な記録を打ち立てた。
ポケモンGO後、新たなヒット作に苦戦
しかし、『ポケモンGO』の爆発的な成功以降、Nianticは次なるヒット作を生み出すことができなかった。『ハリー・ポッター:魔法同盟』や『NBA All-World』など、有名IPを活用したゲームをリリースするも、『ポケモンGO』のような成功には至らず、サービス終了となるタイトルも相次いだ。
業績不振を受け、Nianticは事業規模の縮小を余儀なくされる。2022年には従業員の8%を削減、複数のプロジェクトを中止。2023年にも230人を解雇し、NBAやマーベル関連ゲームの開発から撤退するなど、厳しい状況が続いている。
買収候補Scopelyと背後の巨大資本
買収候補として名前が挙がっているScopelyは、『Monopoly Go!』『Marvel Strike Force』など、世界的に人気のモバイルゲームを多数運営する大手企業だ。2023年には、サウジアラビアの政府系ファンドSavvy Games Groupに49億ドルで買収された。
Savvy Games Groupは、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子が議長を務める政府系ファンドPIF(パブリック・インベストメント・ファンド)の傘下にあり、 国家戦略としてゲーム産業への投資を積極的に推進している。潤沢な資金力を背景に、ゲーム業界での影響力を急速に拡大している。
XenoSpectrum’s Take
今回の報道は、ARゲーム市場をリードしてきたNianticの大きな転換期を示唆していると言えるだろう。『ポケモンGO』の成功後、収益源の多角化に苦慮してきたNianticにとって、ゲーム部門の売却は、AR技術を基盤とした新たな事業展開に注力するための戦略的な判断となり得る。
一方、買収を検討しているScopely、そして背後のSavvy Games Groupにとっては、Nianticが持つARゲーム開発のノウハウと、強力なIP獲得の機会は大きな魅力だ。Savvy Games Groupは、サウジアラビアの政策に基づき、ゲーム産業における 主導権を握ることを目指しており、今回の買収が実現すれば、その動きをさらに加速化させる可能性がある。
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