量子コンピューティング企業のQolabは、実用規模の量子コンピュータの開発を加速させるため、1600万ドル(約25億円)超のシリーズA資金調達を完了したことを発表した。この資金調達はOctave Venturesが主導し、Development Bank of Japan(DBJ)、Wisconsin Alumni Research Foundation(WARF)、Phoenix Venture Partnersが参加している。
Qolab、量子コンピューティング界の重鎮らによって設立
Qolabは、量子コンピューティング分野の第一人者たちによって設立された新興企業だ。創業メンバーは以下の3名の業界重鎮で構成されている:
- CEO: Alan Ho(元Google)
- CTO: John Martinis(2019年にGoogleの量子超越性実証チームを率いた物理学者)
- ハードウェア部門責任者: Robert McDermott(2020年米国物理学会フェロー、ウィスコンシン大学マディソン校)
同社は超伝導量子ビットの品質向上、特にコヒーレンス(量子状態の維持能力)の改善に注力している。この取り組みを実現するため、Applied Materialsなど半導体業界のリーダー企業とパートナーシップを結び、独自の製造プロセスの開発を進めている。
革新的な技術アプローチ
Qolabは、300mmの半導体プロセスを活用して超伝導量子ビット用のインターフェースを製造している。従来のコンピュータにおけるビットに相当する量子ビット用は、超伝導電子回路によって生成される。同社の技術は、より高品質な量子ビットの生成を可能にし、新たなオンチップスケーリング技術によって量子ビットのスケーリングコストを低減する。
また同社は、量子プロセッサ部分に影響を与えるノイズやコンポーネント間のクロストークを低減するため、非量子ビット部分の設計改良にも取り組んでいる。これは量子コンピューティングにおける主要な課題の一つであるエラー率の低減に直接寄与する取り組みとなる。
業界における位置づけと今後の展開
量子コンピューティング分野では、ロンドンを拠点とするOQC、マルチチップ量子コンピュータ設計を手がけるRigetti、2022年にOspreyプロセッサをリリースしたIBMなど、複数の企業が超伝導量子コンピューティングの開発を進めている。
Qolabの共同創設者であり、ハードウェア部門責任者のRobert McDermott博士は、「現在の技術の限界を克服する新世代の高コヒーレンスキュービットを開発している」と述べ、今回の資金調達が「ハードウェア能力のスケーリングと、需要に応える信頼性の高い高性能量子プロセッサの提供における重要な一歩となる」と強調している。
Source
- Businesswire: Qolab Secures over $16.0 Million in Series A Financing
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