Qualcommの新たなArm版Windows向けプロセッサ「Snapdragon Xシリーズ」は、Qualcomm独自開発のOryon CPUコアと45TOPSのNPUが大きな注目を集めがちだが、実はこのプロセッサには「Adreno X1」と呼ばれる、これまた新開発の強力なGPUも搭載されている。ここでは今回明らかになったこの「Adreno X1」GPUについて詳しく見ていこう。
Adreno X1 GPU: Snapdragon Xのピクセルを駆動
Adreno X1シリーズのGPUは、最大4.6TFLOPSのFP32演算性能を提供し、ピークフィルレートは72ギガピクセル/sである。このデザインはDirectX 12.1をサポートしており、Shader Model 6.7とDirectMLを加速されたメタコマンドと共にサポートしている。DirectX 11、Vulkan 1.3、およびOpenCLもドライバ内でネイティブにサポートされている。
完全な構成では、Adreno X1は6つのシェーダプロセッサ(SP)を特徴とし、合計1,536のALUが1.5GHzで動作し、1サイクルあたり96テクセルを処理できる。レンダーフロントエンドは1サイクルあたり2つの三角形(セットアップとラスタライズ)をサポートし、双方向LRZ描画順序独立深度拒否とTier-2の可変レートシェーディングをサポートしている。
各SPには6つのレンダーバックエンド(またはROP)があり、1サイクルあたり48ピクセルを処理し、MSAAでは96フラグメントを処理できる。設計にはGMU(RISCプロセッサを内蔵したGPU)があり、電圧、クロック、電力管理などを制御し、最大8つのVMを完全に仮想化サポートしている。 個々のSPの機能と能力は上記のスライドに示されている。各SPには2つのパイプがあり、それぞれ128の32ビットベクターALUと256の16ビットベクターALUを持ち、さまざまなデータタイプをサポートしている。また、さまざまな数学操作のための16の32ビットEFU(基本関数ユニット)も備えている。32ビット浮動小数点および64ビット整数アトミック操作がサポートされており、各パイプには192KBの汎用レジスタがある。
現在利用可能なほとんどのモバイルプロセッサと同様に、システムメモリは最新プラットフォームのCPU、GPU、およびNPU全体で共有されている。利用可能な帯域幅を最大限に活用するために、Adreno X1はタイルベースのレンダリングとGMEMと呼ばれる内部メモリをサポートしている。さらに、各SPペアには128KBのクラスターキャッシュと1MBの統一L2キャッシュ、シェーダ命令、テクスチャデータなどのための小さなバッファやキャッシュもある。
GMEM自体は3MBのSRAMで構成されており、システムメモリから独立して動作する2TB/sを超える大容量の帯域幅を持っている。GMEMは構成可能で、カラーや深度キャッシュ、汎用ローカルメモリなど、さまざまな用途に使用でき、グラフィックスおよびコンピュートワークロードの両方で利用可能である。この超高速メモリリポジトリをGPU上に持つことで、GPUがシステムメモリにアクセスする頻度を最小限に抑え、最終的に実効総帯域幅を最大化し、性能と効率を向上させる。
QualcommはAdreno X1のタイルベースレンダリングをFlexRender Technologyと呼んでいる。FlexRenderはさまざまなモードをサポートしており、各サーフェスごとにそのモードを動的に切り替えることができる。ダイレクトモードは今日のソフトウェアに最も互換性があり、他のGPUが使用する技術に似ている。ビンモードでは、フレームがタイルにスライスされ、各タイルがGMEMにレンダリングされる。そして、両方の機能を組み合わせたビンダイレクトモードがある。
Adreno X1 GPUの予想される性能
性能に関して、QualcommはIntelやAMDの競合製品と比較して優れた性能と電力効率を再び主張している。GPUの性能は、ネイティブでないゲームでも、Core Ultra 7 155Hに搭載されたArcグラフィックスエンジンと同等か、それ以上の性能を発揮するという報告がある。これは、Windows 11で新たに搭載される「Prism」エミュレータによる恩恵も大きいだろう。
これまでにQualcommから公開された情報とデータは、Snapdragon Xシリーズの非常にポジティブなイメージを描いている。同じ電力レベルの他のモバイルプラットフォームと比較して、性能が多くの面でトップクラスであり、Qualcommが主張するようにSnapdragon Xの効率が優れているとすれば、このプラットフォームを中心に構築されたマシンは、その優れた性能を提供しながらも、印象的なバッテリー持続時間を持つ事になるだろう。
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