Qualcommが次世代のARM based PCプロセッサ、Snapdragon X2シリーズの開発を既に開始していることが明らかになった。WinFutureによると、新たなチップセットは「Project Glymur」というコードネームで開発が進められており、初期のテストが2024年第3四半期に行われたとされている。
これまでとは異なるコードネーム規則
Snapdragon X2シリーズの中核となるチップセットには「SC8480XP」というモデル番号が付与されている。これは現行のSnapdragon X Elite/Plusシリーズで使用されている「SC8380XP」の後継モデルであることを示唆している。WinFutureの報道によれば、Qualcommは7月から8月にかけて、SC8480XPの初期サンプルを用いたテストを実施。この段階では、様々なNANDとメモリコンポーネントの組み合わせを試験しており、最終的な仕様決定に向けた評価が行われているものと見られる。
興味深いのは、Qualcommがこれまで採用してきたコードネームの命名規則を変更した点だ。従来、同社はハワイにちなんだ地名をコードネームとして使用してきたが、「Glymur」はアイスランドにある2番目に高い滝の名前である。この変更が単なる偶然なのか、それとも新世代チップの性能や設計思想の変化を暗示しているのか、様々な憶測を呼びそうだ。
現時点でSnapdragon X2の具体的な仕様は明らかにされていないが、業界関係者の間では、現行のSnapdragon X Eliteシリーズをベースに、さらなる性能向上と効率化が図られるのではないかとの見方が強い。現行のSnapdragon X Eliteは、12コアのOryonアーキテクチャを採用し、単一コア性能や電力効率の面で高い評価を得ている。一方で、マルチコアパフォーマンスやグラフィックス性能については、競合他社の製品と比較してやや見劣りする面があったことも指摘されている。
Snapdragon X2では、これらの課題を克服し、総合的な性能向上を実現することが期待されている。特に、AIへの対応力強化は避けては通れない課題だ。AMDやIntelが最新のRyzen AI 300 “Strix”やCore Ultra 200V “Lunar Lake” SoCsで、高性能なNPUと強力なCPUコア、さらには統合GPUによる優れたグラフィックス性能を実現していることを考えると、Qualcommもこの分野で競争力を高める必要がある。
市場投入時期については、Dellの内部資料の漏洩情報によると、Snapdragon X V2(おそらくSnapdragon X2 Eliteを指す)が2025年中頃に登場し、その後継となるSnapdragon V3が2027年第4四半期に予定されているという。これらの情報は暫定的なものではあるが、QualcommがArmベースPCプロセッサ市場で長期的な戦略を描いていることを示唆している。
また、Snapdragon X Plusラインナップにも新たな動きがある。「X1P-24-100」というエントリーレベルの新モデルが準備されているとの情報もある。このモデルは8コア設計を維持しつつ、クロック速度やGPU性能を抑えることで、よりコストパフォーマンスの高い製品として位置づけられる可能性がありそうだ。
Xenospectrum’s Take
Qualcommの次世代Snapdragon X2シリーズの開発は、ArmベースPCプロセッサ市場に新たな活況をもたらす可能性を秘めている。初代Snapdragon Xシリーズで示された可能性を、さらに現実的な競争力へと昇華させることができるかが、業界全体から注目されているところだ。
特に注目すべきは、AIへの対応力だろう。現在、PCの世界ではAI機能の搭載が当たり前になりつつあり、ユーザーの期待も高まっている。Qualcommが得意とするモバイル向けAI技術をPC向けにどのように適応させ、AMDやIntelとの差別化を図るのか。その戦略が、Snapdragon X2の成功を左右する鍵となるだろう。
また、コードネームの変更は単なる偶然ではなく、Qualcommの設計思想の変化を示唆しているのではないだろうか。ハワイからアイスランドへの移行は、より冷涼な環境での動作を意識した省電力設計への注力を暗示しているようにも思える。
Snapdragon X2の登場は、PC市場に新たな選択肢をもたらすだけでなく、競合他社にもさらなるイノベーションを促す触媒となるかもしれない。今後のQualcommの動向から目が離せない。
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