QualcommのSnapdragon X Eliteチップを搭載した「AI PC」が注目を集めているが、その採用は期待ほど進んでいないようだ。PassMark Softwareのデータによると、Snapdragon X Eliteチップを搭載したPCのベンチマーク提出数は全体のわずか0.3%にとどまっており、x86アーキテクチャのIntelとAMD製チップが99.7%を占めている状況だ。
市場シェア獲得へは、まだまだ長い道のり
Qualcommは、ArmベースのCPUが今後5年間でWindows PC市場の50%を占めるようになると予測していた。Qualcommの最高経営責任者(CEO)であるCristiano Amon氏は、「一部のOEMメーカーはすでにArmをPC製品の60%に使用したいと考えている」と発言していた。しかし、現実はその予測とは大きくかけ離れている。
PassMark Softwareの直近30日間のデータによると、Snapdragon X Eliteシリーズを搭載したArmベースのPCからのベンチマーク提出数はわずか56件で、全体の0.3%に過ぎない。これは、レビュー用に配布されたサンプル数よりも少ない数字だ。
この低調な採用率の背景には、いくつかの要因が考えられる。まず、Snapdragon X Eliteチップを搭載したラップトップは、主にMicrosoft Copilot+認証を受けたハイエンドモデルに限定されており、15万円以上の価格帯から始まっている。優れたバッテリー性能と比較的高いCPU性能を持つものの、非Arm向けソフトウェアやゲームとの互換性に問題を抱える製品としては、高すぎる価格設定が購買者の意欲を削いでいるのかも知れない。
また、Snapdragon X Eliteシリーズの市場投入からまだ日が浅いことも、この数字に反映されていると考えられる。7月18日の正式発売から1か月足らずの期間でのデータであり、長年市場を支配してきたx86アーキテクチャとの比較では、当然大きな差が出ることになる。
しかし、この状況がArmベースのWindows PC市場への参入の失敗を意味するわけではない。中価格帯のSnapdragon X Elite搭載ラップトップの登場が予定されており、今後の展開次第では状況が変わる可能性もある。
さらに、AI PC市場自体がまだ立ち上がりの段階にあることも考慮する必要がある。AMDのRyzen AI 300やIntelのLunar Lake CPUの登場により、Armオプションとx86の性能比較、特にAI性能の面でより明確な図式が描けるようになるだろう。これらの新しいx86 CPUは、Snapdragon X CPUに対して大きな脅威となる可能性がある。さらに、NVIDIAもAI PC市場に参入する可能性があり、Snapdragon CPUはさらなる競争に直面することになりそうだ。
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