日本のRapidusが、2nmプロセス技術を用いた半導体量産に向け、極紫外線(EUV)リソグラフィマシンを2つの工場に計10台導入する計画が明らかになった。日本国内へのEUV露光装置導入は今回が初となり、半導体産業の復興に向けた大きな一歩となる。
2つの製造施設に計10台のEUV露光装置を導入
日刊工業新聞の報道によると、Rapidusの小池淳義CEOは、2つの半導体製造施設「IIM-1」と「IIM-2」に合計10台のEUVリソグラフィマシンを導入する計画を明らかにしたとのことだ。IIM-1は現在建設中で、2nmプロセス量産の拠点となる予定。IIM-2はIIM-1に続き、比較的早期に稼働を開始すると見られている。
2024年12月には、IIM-1に最初のEUVリソグラフィマシン、ASML製「NXE:3800E」が搬入された。これは日本国内で初めてのEUVリソグラフィマシン導入となり、日本の半導体産業復興に向けた象徴的な出来事として注目された。
小池CEOは、EUVリソグラフィマシンの具体的な導入スケジュールや機種については言及していない。しかし、IIM-1に最先端の露光装置が今後数年で導入され、その後IIM-2にも導入が進むと推測される。
2027年の2nmプロセス量産開始を目指す
Rapidusは、2nmプロセス技術を用いた半導体の量産を2027年に開始することを目指している。IIM-1では、2025年4月頃に2nmプロセスの試験生産を開始し、同年6月には米Broadcomにサンプル出荷を開始する計画だと報じられている。Broadcomは、AIや通信プロセッサの大手設計企業であり、GoogleやMetaなどの企業と協業している。
2nmプロセスは、半導体の微細化技術における最先端であり、高性能化と低消費電力化を両立できると期待されている。Rapidusが2nmプロセスの量産に成功すれば、TSMCやSamsung Electronicsなどの半導体ファウンドリの世界的なリーダー に肩を並べる存在となる可能性を秘めている。
EUV露光装置導入による生産能力への影響
Rapidusが導入するEUVリソグラフィマシンの機種は明らかにされていないが、IIM-1に導入されたのがASMLの「Twinscan NXE:3800E」であることから、同機種が採用される可能性が高い。Twinscan NXE:3800Eは、1時間あたり最大220枚のウェハーを処理できる能力を持つ。
半導体の製造プロセスにおいて、EUV露光装置は極めて重要な役割を担う。特に、2nmプロセスのような最先端プロセスでは、EUV露光装置を用いて微細な回路パターンをウェーハに焼き付ける必要不可欠となる。
TrendForceの試算によると、2nmプロセスでは、1チップあたり約20層のEUV露光層が必要となる可能性がある。仮にIIM-1に5台のEUV露光装置が導入された場合、月産17,000~20,000枚のウェーハを生産できる潜在力があると見込まれる。ただし、これは非常に粗い試算であり、装置の稼働率や設計の複雑さなど、多くの変動要素によって実際の生産能力は左右される。
半導体ファウンドリ競争 の現状とRapidusの展望
半導体ファウンドリ業界では、TSMCが2nmプロセスの量産を2025年に開始する予定で、Apple、NVIDIA、AMD、Qualcommなどが初期顧客として名を連ねると報じられている。Samsungも2nmプロセスの開発を進めており、NVIDIAやQualcommとテストを実施しているという。一方、Intelは20Aプロセスを採用したPanther Lakeプロセッサを2025年後半に投入する予定である。
このように、世界の半導体ファウンドリは、2nmプロセス技術の開発と量産化に向けてしのぎを削っている。Rapidusは、これらの競合に対し、後発ながらも政府支援を背景に、急速にキャッチアップを図っている。
Xenospectrum’s Take
RapidusのEUVリソグラフィマシン10台導入計画は、2nmプロセス量産に向けた明確な進捗の兆候を示すものとして評価できる。日本政府の支援のもと、Rapidusは日本の半導体産業復活のキープレイヤーとなる潜在力を秘めている。
ただし、2nmプロセスの量産化は技術的に非常に困難な課題であり、TSMCやSamsungなどの先行企業も多くの困難に直面している。Rapidusが2027年という目標期日までに量産を開始するためには、技術的な課題を克服し、生産能力を迅速に立ち上げる必要がある。
また、量産開始後の 顧客獲得 (顧客獲得) も重要な課題となる。Broadcomのような大手顧客との連携を強化するとともに、 幅広い顧客に魅力的な提案を行うことが求められる。
Source
- 日刊工業新聞:ラピダス、EUV露光装置を10台導入 早期に量産体制
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